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コーギーとお昼寝

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走る男と追う女2

1949年(昭和24年)7月、京都。
通産省の会議室に、神戸と此花と私の三人が八幡に向き合うように座っていた。
「今回の話の内容はいたって単純、広畑の件です」
当時日本最新鋭の機材が揃っていたがゆえに戦時賠償の対象となっていた広畑製鉄所が外されたのは去年の暮れのことだ。
釜石・室蘭は北日本製鐵(のちの富士製鉄)に、八幡は八幡製鉄に、と言うのはすでに確定しているなかで日鐵の製鉄所のうち広畑だけが宙ぶらりんになったことになる。
葺合と此花は目に見えて色めき立ち、神戸もまた広畑の獲得に動いていた。
「そうだと思ってましたわ、でなきゃわざわざ呼び出される理由が無いですもの」
「怒られるようなことはしたくないしね」
「まあ、そこはそうですけど」
「……川崎、住友、神戸。この三社での広畑の争奪戦については聞いてます」
八幡は呆れたように溜息を吐きながらも、そう言葉を継いだ。
「争奪戦なんてやな言い方だね」
「事実でしょう」
「これだから官営様はヤだねえ」
此花はぽつりとそう呟いてちらりと私の方を見た。
私は否定も肯定も出来ずに視線をそらした。
「これは通産省、ひいては国の考えですが、あなた方三人の合併を提案します」

「「「……は?」」」

三人の声が重なった。
「広畑を三人で面倒見ろって話ですよ」
「……そう来るとは思わなかったわ」
ぽつりと神戸さんが呟く。
此花も私も想定外の事態に顔を見合わせるばかりだ。
「上の意向ですから後は各々で考えといてください、あと葺合には『いくら独立するしないでごたついてるからって私の呼び出し無視して代理立てるようなことは今後控えるように』と」
八幡さんはそう言ってさっさと会議室を出て行くのを見送ってから、それぞれが深い溜息を吐いた。
それが上の意向なら仕方がない、と思いながら葺合がどう答えるのかが怖くて悩むのだった。

****

「……西宮、もう一度言ってくれ」
新聞をぐしゃりと握りつぶして葺合が言う。
「いやだから、八幡さんが『広畑を獲得するなら三社合同で』って」
呆れ切った視線で葺合は溜息を吐く。
新聞を綺麗に畳みなおす葺合に私は言葉をつづけた。
「でも、製鋼一貫製鉄所は西山さんの悲願でしょう?」
川崎造船の製鉄部門のトップであるその人は高炉のある製鉄所を作ることを長年の悲願とし、その悲願への執着を誰よりも理解して叶えたいと願っていたのは葺合だった。
そしてその願いを身近に見てきたのは他でもない私である。
「合同と合併はまったく違うものだ」
「つまり、それなら取りに行かないってこと?」
「それはオヤジの望みじゃないだろう」


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走る男と追う女1

1950年(昭和25年)8月7日
夏の盛りの暑い中で行われた株主総会が終わって、葺合と共に私は外へ煙草休憩を取りに出た。
「よう」
喫煙所で私を待ち構えていた住友金属製鋼所―通称此花―が煙草片手にひらりと手を振った。
日陰とはいえこんな真夏にここでずっと待っているとはずいぶん風変わりなものだ、と私は思った。
「住友金属は呼んでないぞ」
「違うさ、ただ単に独立のお祝いをね」
彼女は足元に置いていた鞄から小ぶりな花束を葺合に手渡してくる。
今日の株主総会で私達川崎造船製鉄部門は晴れて独立し、川崎製鉄となった。そのお祝いに彼女は花束を持って来たのだというのだ。
手渡された小ぶりな花束は夏らしく爽やかな青い花でまとめられたもので、少し暑さでしなびてはいるけれど水につければすぐに戻るだろう。
「そのために待ってたの?」
「律儀だろ?」
そうどや顔で私に笑いかけて来たので「馬鹿みたい」と返した。
でもこのお祝自体は決して悪い気分じゃない。
「あとこれは尼崎から新品の手ぬぐい、神戸からは簪だ。これで後は借りたものと6ペンス硬貨を用意出来たら良かったんだが、それはまあ他の奴に頼んでくれ」
手渡されたかのこ柄の手ぬぐいと赤い石のついた年代物の玉簪を次々に手渡され、私はどうしようと葺合に視線を送る。
「……此花、何の話だ」
「サムシング・フォーだよ、西洋の古い言い伝えで花嫁が幸せになるおまじないだ」
「はっ……?!」
声をひっくり返した私に「結婚するわけじゃないぞ?」と葺合が真顔で返してくる。
私は手渡されたものに戸惑いながらも此花は「いいんだよ、」と返した。
「独立も新しい門出だから、縁起のいいもん渡した方が良いと思ってな」
「なるほど、縁起担ぎか」
「葺合そんなあっさり納得していいの?!」
「ちなみに、サムシング・フォーはどう言うものなんだ?」

「……『なにかひとつ古いもの』」
そう言って玉簪を指さす
「『なにかひとつ新しいもの』」
次にかのこ柄の手ぬぐい。
「『なにかひとつ借りたもの、なにかひとつ青いもの』」
青い花束を指さしてから私の靴を指さした。
「『そして靴の中には6ペンス銀貨を』……ってやつだ。」

此花はそう告げると私の目を見た。
その瞬間、直感的に此花は私が葺合を好きでいる事を知っているのだと悟った。
だからわざわざこんなものを渡してきたのだ。
「じゃあ、私は行くよ。これ以上ここにいると葺合に広畑の件の文句言いそうなんでな」
「今更あの話を引っ張り出すな」
此花は吸い終えた煙草の火を消してからふらりとどっかへ去っていった。




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走る男と追う女0

―振り向くな、振り向くな、後ろには夢が無い。
―ただ前を向いて走る事だけが、未来への最短距離だ。
「葺合!」
派手な音を立てて開いたドアに従業員が一斉に振り向く。
荷物が片付いてがらんどうになった部屋に、あの美しいワインレッドの瞳の輝きはない。
「西宮さん、どないしました?」
「葺合はいる?」
「それが今朝から居らんのです、閉鎖式に出たないんやろうとは思うんですけど」
本社の社屋にも、ここにもいない。


(どこに行ったの、葺合)

感謝の言葉のみを告げて私はもう一度彼を探しに走り出した。



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西宮と葺合がメインの過去編です。神戸でも日新でもなく川鉄ってどういう事なん痕は自分が一番思ってます。

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勝山くんと鯖江くん

「ねぇさばばー」
勝山は焼き鳥を食いながらいつものようにそう呼んだ。
いつもこうだ、勝山の名前のセンスはいまいちよく分からない。
俺もまあ気にせず焼き鳥を食いながら勝山の言葉の続きを待った。
「ふくふくの好きな人って誰なの?」
焼き鳥のかけらが、気管支に入った。

勝山くんと鯖江くん


「おま、福井の好きな人知らんかったんか?!」
「そう言えば聞いてなかったなーって」
ほけほけとした表情で衝撃的な事実を打ち明けられて逆に驚きしか出てこない。
福井が名付け親がかつて治めていた地に恋い焦がれていることは福井の周囲の人間にとっては公然の秘密であり、それを勝山が把握していないことに驚きすら沸いた。
この調子だと大野も知らなかったりするんだろうか、なんかそんな気がするが奥越はどうしてこうもマイペースなのか。
「……結城さんだよ」
「秀康公?人間が好きだなんて大変だねぇ」
「そっちじゃなくて土地の方だよ、茨城県結城市。」
「ああ!前にふくふくが恐竜博物館に連れて来てた、亀甲絣の紬の着物着てる人?」
「たぶんその人だな」
「へー、あの綺麗な男の人かあ」
納得したように焼き鳥をもぐもぐと食い進めていく。
本人が納得したなら何よりだが勝手に俺の鶏皮を食うのはやめろ。






勝山さんのキャラが出来たよ記念。そのうち越前大野さんも出てくるはず。

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アド街と芸術祭と県北と

「……解せぬ」
テレビの電源を落としてぽつりと常陸太田が呟いた。
「なんだってあっしンとこの鯨が丘商店街が出ないんで?!あっこはうちじゃ有数の観光地!だいたい奥久慈ってーンならうちの全域も紹介するべきじゃないんで?!」
バンバンと机をたたく常陸太田にジト目で答えるのは常陸大宮だ。
「そん気持ちは分かるけんど、そもそもお前そう言うキャラやったっけ……?」
「あっしを書くのが年単位で久しぶり過ぎて作者が過去の文章読み返したらこんな感じだったんでしゃーねぇだよ!」
ちなみにこれは本当の話で、最近シリアス目の話ばかり書いていたので県北内陸組のキャラを完璧に忘れていて頭を抱えました。
そもそもこういうコメディ寄りの話自体久しぶりなのである。しゃーない。
「すごい久しぶりのメタセリフ……」
大子町が冷静に呟いた。
夜食にと持って来た焼き立てのアップルパイを食卓に置いてから、「まあ今回は僕のところの町内全域が対象で二人のところは一部のみだった訳ですし……」とフォローになってないフォローが漏れる。
「竜神大吊橋も舟納豆も出ましたし、ね?」
「何よりの不満は県北芸術祭の話が微塵も出ねぇ事だ!アレにうちがどんだけかけてることか………わざわざ道の駅も作って……」
「確かにあれが出らんのは違和感あんね、もうすぐ始まるっちゅうんに」
「だろー?」
「で、でも、きっとたくさん来てくれますよ!秋は観光シーズンですし!」
「来て貰わねーとこっちが困ンだよ……」




県北芸術祭は9月17日開幕です。


アド街奥久慈見てて気になったのが「県北芸術祭は?」だった私です。みんなおいでよ。

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