「……今年はしなくてもいいと思うんだ」
大洗鹿島線の声がひどく深刻に響く。
「するべきだよ、毎年してるじゃない」
「と言うか毎年反対してる気がするんだけど……」
ぷりぷりする鹿島と呆れ気味の神栖に、「絶対ヤダ」と譲る気皆無の答えが届く。
それに口を開いたのは、臨海線だった。
「旅客運行ぐらいでキレるな、お前」
当事者の癖に何言うんだお前、と言うのはこの場にいるほぼ全員の本音だった。
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毎年地元のイベントに合わせて旅客運行される鹿島臨海線の臨時列車は大人気の出し物の一つだった。
それをやるとき、毎年このブラコ、いや弟が反対するのである。
「兄さんの一番暴かれちゃいけないところが衆目にさらされるなんて僕は嫌だ!」
「……衆目にさらされるったってせいぜい1000人程度だろうが」
「それでも嫌だ!兄さんの普段は誰にも見せないあんなとこやこんなとこがキモオタどものカメラに閉じ込められるなんて!」
正直めんどくさいなこいつ。それがこの場にいたほぼ全員の本音だった。
「なんか言い方がアレだけどあながち間違ってはないよね」
「そうか?」
鹿島突っ込むの諦めたな、と神栖は一瞬で悟った。
ああここに二人の扱いを一番心得ているであろう大洗がいたら。珍しく二人の気持ちはほぼシンクロした。
「だから臨時運行やっぱやめよう?!兄さんの食費ぐらい一人で稼ぐから」
「……どっちかと言うと小遣い稼ぎだけどな」
ちなみに臨時旅客は結局出すことになりましたとさ。
鹿島まで臨時旅客、乗ってきました。そして乗りながら考えたのがこれです。そして私はとても眠い。