「土浦寒くねぇ?」
「普通ですよ、湖からの風でそう思うだけで」
「いやどう考えてもさみぃでしょこれは、やっぱり浅草に上着おいてくんじゃーなかったかいんさ」
土浦で雪が降りました日のこと。
東武の人たちと土浦「日光さんは?」
「・・・・・ここにいるが文句あるか常総」
相変わらずのふてぶてしさと目つきの悪さ。
うん、俺の記憶にあるままの東武日光線さんだ。
「ああ、お久しぶりです」
「兄さんが寒いといってるんだからお前の上着を貸せばいいだろう」
「うちは貧乏なんで上着貸したら俺が風邪引くんですけど」
「常総が風邪引くほうが問題だからいーや、オレは日光に代わり頼めるけど常総はバスや龍ヶ崎に代わり頼めねぇし」
「兄さんは俺の上着使って、どうせ俺は寒さ慣れしてるし」
押し付けるように日光さんが伊勢崎さんに上着を押し付ける。
何年かぶりに会うが相変わらずこの人はブラコンである、もう慣れたけど。
「ありがとうな、お前のやつあったかいから助かる」
「兄さんは気にしなくていい」
突然携帯のベルが鳴った。
発信者は「東武東上」
・・・・・この名前を聞いただけで体温が5度ぐらい下がった気がするのは気のせいだと思いたい。
「もしもし」
『常総、そこに馬鹿本線殿はいるか』
「いますけど・・・・・」
『押上で事故起きたから戻って来いって、本線兄弟が電源切ってるからお前に電話したんだ』
「あ、はい」
電話を切って事情を説明したら「・・・・・兄さんの邪魔しやがって」とつぶやいて帰っていった。
そして俺はふと意識が飛んでいた。
「じょうそー、大丈夫?」
「あー・・・・いちおう大丈夫です」
俺の背中を支えるように京成さんが俺を支えてくれていた。
背中がしっとり濡れているから雪の上に倒れたらしい。
ここが車の通るような場所じゃなくて歩道でよかったけど、頭を打った形跡は無い。
「登山軌道からバスに渡してくれって言われた書類渡した帰りにここ通ったら倒れてるんだもん、びっくりしたにゃー。」
「すいません、ちょっと・・・・」
「おうちまで送ってく」
「へ?」
「どうせ今日は休みだし、雪なんて久しぶりだから」
「じゃあ、お願いします」
ぼんやりと俺はいろんな人に愛されているのだと、思う。