忍者ブログ

コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

東京の夜の中で

ちょうど東京に行く機会があったので、ついでに試合を見に行こうと思った。
単独行動の許可を取ってサンゴリアス対スティーラーズ戦のチケットを取ると、最低限の荷物だけを手に秩父宮の立見席に滑り込む。
夜の秩父宮は肌寒くも賑やかで、その賑やかしさがちょっとだけ羨ましくもある。
(……まあ人口が違うしなあ)
うちでもナイターやれたらいいのになあ、などと無責任なことを考えつつ選手たちの試合前の練習に目を向けていたその時だった。
「シーウェイブス!なんでおるん?!」
給水係のビブスを着たスティーラーズがこちらの方に駆け寄ってきた。
「今日スピアーズとの練習試合でこっちに来ててな、勉強がてら見に来た」
「先言うてや、姐さんの分の席余っとるし言うてくれたら譲ったのに!」
「身内席はお前の身内で使っとけ」
「同業他社の友人は広義の身内やわ」
ぶつくさ言いつつ「まあお前が来てくれるなんてめったにあらへんからええけど」と呆れ気味に言う。
「試合後、飲みに付き合いや」
「新幹線の時間的に無理だな」
「じゃあ後で感想聞かせ、サンゴリアスとも共有するから」
雑談もそこそこに選手の元へ戻っていくスティーラーズを眺めながら、さっき買ったビールをひとくち飲む。
ナイターが持つ独特の雰囲気は代えがたいものがあり、まして春の夜となれば桜の花も風に乗って飛んでくるのがいい。
グラウンドの隅のほうにいたサンゴリアスとも目が合ったので軽く手を振り交わす。
試合が始まるまで30分、国内トップクラスの選手たちのアップを見るのもいい勉強だ。
「今日はいろいろ学べるといいな」



------
シーウェイブスとスティーラーズ。
ちょうど偶然同じ日に東京にいたのでそういうネタです。

拍手

PR

花火と恋の歌

春の宵闇に花火の打ちあがる音が響くと、自然に歓声が上がる。
「試合後の花火とかよくやるよなあ」
「お客さんに来てもらわないといけませんから」
色とりどりの花火が咲いては散っていくのを見ながら「夏以外の花火もいいもんだな」とブレイブルーパスさんが言う。
選手もスタッフも観客も花火に目を見開くのが嬉しくて微かに頬が緩む。
「そういやさ、花火の歌って恋の歌も多いよな」
「whiteberryとか米津玄師とかそうですよね」
「だから今日選手のコイバナトークイベントとかプロポーズイベントしてた訳?」
試合前にあったイベントの話を持ち出してきたブレイブルーパス先輩に「そんなとこです」と笑ってごまかす。
「俺らは恋とかそんなしてる暇もないけどプロポーズのやつとか見てて幸せな気分になれるよな」
「恋はするものじゃなくて落ちるものですよ」
僕がそんなことを言うと「そういうもんなのか?」と素直に尋ねてきた。
(ブレイブルーパスさんはそういうのと縁遠そうだもんなあ)
その良し悪しは判断に迷うけれど、その問いに対する答えには迷うものがあった。
「うちの社長がそう言ってました」
素直に答えにくくて社長のせいにすると「人の言葉かよ」と返ってくる。
恋というやつが花火のように一瞬で散ってくれるものならばどれだけ気が楽だっただろう。
「あ、いた!」
そう言って駆け寄ってきたアザレアを捕まえると、暖かい家族の匂いがする。
腕に抱えて花火がよく見えるようにしてやるとわあっと嬉しそうな声を上げる。
「花火、うちの妹にも見せてやりたいな」
「僕は歓迎しますよ」
その腕に抱えた温かさと重みを感じながら僕はそう笑った。


-----
レヴズとブレイブルーパス。試合後の花火見たかったな~(無理)

拍手

20年目のティーセット

仕事を終えて家に帰ると、玄関から甘くいい匂いが漂っているのが分かった。
「福山、仕事お疲れ様」
水島が洗濯籠を手に迎えに来てくれて「今日こっちに来る日だっけ?」と聞いてしまう。
「それは明日だけど今日お休みだから早めにね。はい、洗濯かご」
私が家に帰ると最初に汚れた作業着を洗濯しにいくことを知っているから、洗濯籠いっぱいの作業着やタオルを詰めると洗濯機のほうに行ってしまう。
普段はしないのに今日はそういう気分なんだろうか、と考えながら茶の間の戸を開ける。
すると茶の間の机の上にはケーキや焼き菓子が並び、甘くて香ばしい香りが小腹を空かせてくる。
「今洗濯機スイッチ入れたよ」
「ありがとう、今日はどうしたの?」
「今日は結婚20周年の記念日だから」
水島が訳もなくそう言いながらお茶を準備してくる、香りからして紅茶だろうか?
よく見ると緋色の備前焼のティーカップも紅茶のポットも見覚えのないシロモノで、新しく買ったのだろうかと疑ってしまう。
「……結婚というより会社の統合20周年じゃない?」
「統合を機に結婚したんだから一緒でしょ」
ゴーンショックからの回復を目指していた時代に提案された二社の統合は私たちの関係性を大きく変えた。
もともと私たちは近所に住む幼馴染から夫婦の深化は確かにそこがきっかけだったのだ。
「でも福山とこうなれて私はよかったと思ってるよ」
「まあ、それもそうよね。それで一緒になってからの20年も大変だったけど」
「あー……」
この20年を思い返すといろんな事があり過ぎた。
業界も世の中も駆け抜けるように変わっていってそれを必死で追いかけていくような、そんな20年だったように思う。
「大変だったけど福山と京浜さんたちがいて、西宮や千葉もいて、このみんなだからやって来れたんだよね」
「本当にね」
紅茶ももういい具合だろう、ポットに手を伸ばしてお茶をティーカップに注げば綺麗な赤が器によく映える。
「これからもよろしくね」
そんな一言とともに紅茶を差し出せば水島は「もちろん」と明るく笑った。



-----
福山と水島。
jfeは今年で誕生20年、結婚20年目は陶器婚式。つまりまあそういうことです。

拍手

地下鉄に乗る

休日、久しぶりに家でゴロゴロしていたら水島から電話が来た。
『都営地下鉄と東京メトロってどう違うの?』
「いきなり何?」
『いやほら、今日から駅でうちの会社のアナウンス流すらしいじゃん?
だから家帰る前に聞いて帰ろうと思ったらアナウンスやるの都営地下鉄ですから気を付けてくださいねって言われた』
水島が東京の本社に来ていたのは初耳だが、話の内容は心底どうでもいい。
というかお前それを聞くためだけに土曜の朝から電話よこすのやめなさい、安眠妨害だぞ。
「経営元が違うんでしょ、鉄道は俺よく知んないから福山さんに聞けばいいじゃん」
『いやそうだけどさー……』
「なに?」
『今なんか霞が関駅着いちゃってて東京駅への戻り方が分かんなくなった』
「本社に電話して迎えに来てもらえ!もう切るからな!」

本当にどうでもいいなお前!!!!!!!

なお、この後水島は本社の顔見知りに迎えに来てもらい、無事に家に帰れたようだった。

----
千葉と水島。この兄妹はどうでもいい話ずっとしててほしい。
アナウンスは都営地下鉄三田線で内幸町に向かう電車で聞けるそうです。

拍手

ふりだし

「この度は本当にご迷惑をおかけしました」
玄関を開けると、レッドドルフィンズが深々と頭を下げて手土産のお菓子を差し出してくる。
ご迷惑の心当たりはひとつだけあるがもう終わったことのつもりだった。
「……あの件ならもう協会から審判も下りた、今更詫びられても困る」
「そうかもしれませんが、僕としてはこうしてちゃんとダイナボアーズさんに詫びを入れない事には気が晴れなくて」
その一言で心にかすかな靄が浮かんでくる。
少し意地の悪いことを言って困らせてやろうかというささやかな復讐心である。
「つまりそれは、レッドドルフィンズが自分のために頭を下げに来たということだろう?」
あの件ではこちらも迷惑を被ったし、D2の面々も同様に迷惑を被ったはずだ。
彼らにも詫びを入れるのが筋じゃないのだろうか?
「……そうかもしれません。ですが!」
それまで頭を下げていたレッドドルフィンズが体を起こし、目を見てこう告げた。
「新選組の誠の文字を一度でも背負ったものとして、正しくありたいと思ったんです」
以前見た赤に新選組をイメージしたダンダラ模様のデザインのシャツを思い出した。
「俺に詫びを入れることがその第一歩ということか」
「はい、D2メンバーや関係者の皆さんにもちゃんとお詫びに行くつもりです」
「なら俺に構わず他の者にも詫びに行くべきじゃないのか?」
レッドドルフィンズは虚を突かれたように一瞬ぽかんとしてから「ありがとうございます」と頭を下げた。
お菓子を受け取るとレッドドルフィンズは再び会釈をして去っていく。



(……ちゃんと更生してくれるといいんだがな)

人生にはやり直しが効くが、やり直しのチャンスは決して多くない。
その少ないチャンスをしっかりと正しくまっすぐに生きていくことが彼の新しい始まりなのだから。

------
ダイナボアーズとレッドドルフィンズ。
今日から活動再開らしいので、ほんと次こそはしっかりしてくれよ(懇願)

拍手

バーコード

カウンター

忍者アナライズ