*先に
2度目の奇跡は呼ばせない を読むとこの二人の話が通じやすいかも知れない
「やっぱアレは奇跡やったな?」
試合後のスティーラーズ先輩がサラリと言い放ったその一言に俺は小さく苦笑いが漏れた。
「最後のトップリーグの時の事やっぱり気にしてたんじゃないですか~」
冗談交じりに俺はあの日のことを思い出す。
最後のトップリーグの準々決勝、俺にとっては初めての大舞台の懸かった試合だった。
鍔競り合いの緊迫したあの試合をギリギリでねじ伏せたあの日のことを思い出す。
「そらここ数年で一番悔しかったからなあ、アレ」
「大先輩に悔しいと思わせるゲームもう一度やってやろうと思ったんですけどねー、もうスタメンの時点でやる気MAXだったし」
「そらそーやろ、二度も負けた鉄人の名が廃るわ」
「確かに」
あの試合はいつだったっけ、とスマホの写真を見返すと今年の5月だった。
もっと前だった気がするのは今年ずっと忙しなくいたせいだろうか?
遠くでスティーラーズさんとこのスタッフさんが呼んでいるのが見える。
「悪いけど俺今日早上がりせわあかんから片付け頼むわ」
「了解です。あとお土産どーぞ」
カバンからとりだしたのはトマトの詰め合わせ。
「……何でトマト?」
「お米とお酒はあげません」
おれん家ファームのお米とお酒をカバンから見せびらかすと「お前嫌いなもん俺に押し付けよったんか?!」と叫びだす。
トマトは嫌いな訳じゃない。ただ今日は気分じゃないだけ。
(リーグ戦ではおもいきり勝ってやろ!)
そんなことを思いながら「また今度ー」と言って去っていくのだった。
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スピアーズとスティーラーズ