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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

夕焼け空と晩夏のビール

真夜中に過ぎ去った台風の傷跡の修繕に追われて気づけば空はオレンジに燃えていた。
「うゎ、もう夕方じゃん……ずっと泊りがけだったしもう帰ろ」
残りは明日やるからと周囲に宣言して外に出ると枯れ葉がいっぱいで掃除しなきゃなあとため息が漏れた。
社員寮の俺専用のお部屋のドアを開けるとむわっとした熱気が来くる。
クーラーをつけようとすると全然動かなくて、事務所の電気は自前だから平気だったけど社員寮のほうは外部から電気引き込んでるから止まってるんだったと思い出した。
仕方ないので窓を開けるとやっぱりまだ湿った暑い空気で満ちている。
どうするかなあ、と少し考えてから僕はつばさを呼び出した。
「呼ばれましたけど何に使うんです?」
つばさは言われた通り大きなタライを持ってきた。
「冷蔵庫の氷突っ込んで行水するの、他のもいくつか溶けちゃったからつばさも半分食べてよ」
「わかりました」
そう言うとつばさは野球人らしいたくましい腕でタライに氷水を張り始めた。
僕の方は半分溶けた冷凍食品を溶かす(ガスが生きてて良かったとこの時だけは本当に思った)ことにした。
君津が作ってくれた凍らせたカレーだとか、湯せんで溶かすタイプのハンバーグだとか、此花がくれた冷凍野菜だとか、全部一緒くたにお湯で解凍した。
元から料理しないから生鮮食品がほとんどないのが不幸中の幸いかもしれない。
「出来ましたよ」
水を張ったタライには氷や保冷剤がたっぷりと投げ込まれ、足をつければびっくりするぐらい冷たい。しかも一緒に買い置きのお酒まで冷やされてる。
「つばさはほんと出来た子だねえ、アントンもだけど!」
「それほどでもありますね」
つばさの鹿毛を撫でてやれば僅かに表情が緩むのが分かる。
君津なんかは首より下が人間とは言え鹿に表情ってあんのか?なんて失礼なことを言うけど、よく見ればわかるものなのだ。
「もー!お前って子は!高いビールあげちゃう!」
ちょっとお高めの缶ビールを渡せば上機嫌で開け始める。ほんと遠慮のない奴である。いつものことだけど。
俺もビール開けちゃおうと栓を開ければほんのりと冷たい。


「あー……俺、めちゃくちゃ頑張ったなあ……」

飲み干したビールの心地いい冷たさとぬるい風だけがそこにある。
俺たちは仕事柄24時間365日仕事だけど、その頑張りがほんの少し報われるような味がするのが好きだ。
だって今日は頑張ったのだ。
「明日はお昼まで仕事したら3日ぐらい休も……」


鹿島さんとつばさ。

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今宵のビールはほろ苦く

はあーっと深い溜息を洩らした俺と後輩はもう一度大画面に目を向けた。
日本代表応援に盛り上がるパブリックビューイング会場は人が早くも減り始め、日本代表の寂しいスコアが映し出されている。
「そんな都合よく奇跡は降りてこないかあ」
サンゴリアスが深いため息とともにぬるくなったハイネケンを飲み干し、地面に置いた。
俺の方も残っていたハイネケンを飲みながら可愛い後輩をなぐさめた。
「でも前哨戦だしね。実際福岡なんて怪我とは言え10分と経たずに引っ込めたじゃない」
「まあそうですけどね」
「本番は9月20日、そうでしょ?」
俺がそう告げれば、ああそうかと呟く。
「もう10日ちょっとなんですねえ」
「そうだよ、俺たちの府中にワールドカップが来るんだから。まずはそっちを精一杯応援しなきゃ。年明けにはリーグ戦、夏にはオリンピックだよ?」
「ほんと、そう考えるとバタバタですよね」
今夜のビールはほろ苦い結末を迎えた。
けれど、これから先の大舞台できっとうまいビールが飲めるはずなのだ。



「だから、走り抜こう」

俺たちの本番へ。


ブレイブルーパスとサンゴリアス。

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スポーツウェアブランド擬人化

*いつもの良くある思いつきログ


・ナイキ
エア・ジョーダンなどのバスケットシューズやスニーカーで知られているアメリカ生まれの絶対王者。
男性的な装いを好むが実際は女性で、過去には自分の性別を隠していた時代もある。
元々はオニツカタイガーのアメリカ代理店として産まれたためか日本語や日本のスポーツ文化に造詣が深い。
アシックスとはかつて親子同然の仲だったが……?

・アディダス
ドイツ生まれのフットボーラー。
ある兄弟の手によって生まれ、混乱と内紛を繰り返しながら世界有数のスポーツウェアブランドとして君臨している。
サッカーと仕事を好む真面目なドイツ青年。

・プーマ
ドイツ生まれのBボーイ。
アディダスの創業者の兄が兄弟げんかの末に創業、その後は主にサッカーシューズで有名になっていき現在も二大巨頭として君臨している。
反骨心が強めで楽しい事を誰よりも好む。

・アシックス
神戸生まれの無敵のランナー。
かつてはオニツカタイガーとというシューズ専門メーカーだったが、1977年にスポーツウェアメーカーを吸収合併したため現在の社名に変更。
風を切って走ることが好きなランナー。ファッションにも独自のこだわりを持つ風流ないい男。オニヅカ時代にはバスケもしていたが最近はマラソンの方が楽しいらしい。
幼少期のナイキとは親子同然の仲だった時代もあったが今は微妙な距離感。

・ミズノ
大阪生まれの野球少年。
明治から日本のスポーツ振興に携わってきたパイオニア的存在であり、日本の陸上や水泳など多くのスポーツを陰で支えている。
実年齢の割に外見はどう見ても中学生程度にしか見えないのでよく子供料金でバッティングセンターに通い詰めている。

・ヨネックス
新潟生まれのバド男子。
元々は木工所として創業したがバドミントンのラケットで一発大当たりしたのでそれ以降バドミントンやテニスラケットを専門に扱っている。
職人肌で情に厚く義の人でもある。基本的にチームスポーツはあまり得意じゃない。

・カンタベリー
キウイの国の文武両道ラガーマン。
元々はニュージーランドの毛織物工房だったが、その後ラグビーウェア業界に進出。今ではラグビーウェア=カンタベリーぐらいの勢いでシェアを獲得している。
愚直で嘘が付けない真面目な男で仕事も運動も見事にこなすが、個性豊かな業界の面々に挟まれてろくでもない目にあうこともしばしば。
鳥のキウイが好き。



思いついたら追加するかもしれない

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夏の終わり、花火を光らせ

このところの驚異的な暑さは西日本を襲った台風とともに過ぎ去り、夏の湿度だけが残った。
仕事終わりに立ち寄ったコンビニの店頭で、和歌山が花火のセットに目を向けていたのに気づいて「買うのか?」と俺が聞けば和歌山はううんと小さく唸った。
「どうしようか」
「欲しいなら買えばいいだろ、港まつり行けなかったしな」
「じゃあ買おうかな。ライターも買わなきゃ」
そう言って100円ライターと一緒に花火セットを俺の持っていた籠に一緒に放り込んだ。

***

社員寮の狭い庭に水を張った洗面器(花火セットを買ってからバケツを持ってないことに気付いたので)と花火セットを広げると、花火セットについていた小さなろうそくに火をともす。
「ん」
「ありがと」
花火に火を灯せば白い煙と共にフシュ―と鮮やかな火花が夏の夜に飛び散る。
その手持ち花火をぼんやりと二人で眺めながら、夏の湿っぽい夜風が花火の煙を乗せて去っていくのが見えた。
「ねえ、海南」
「なんだよ」
「何で俺と一緒になってくれたの?」
「……なんでだったかな」
ハイボールを飲んでいた手を下ろして和歌山を見た。
勢い良く噴き出す花火を見つめる和歌山の顔つきはどこか不安で、その炎に燃え焦がされて死にたいと思っているように思えた。
見た目は良いとは思う。住友家の血なのか、和歌山は昔から女には困らない方だったのに俺のことをいたく気に入っているようで、それは今も変わらなかった。
「ね、なんで?」
今日の和歌山はちょっと憂鬱と不安に襲われているように見えた。
それが素直に表情に出ている。
「嘘つけないから、だな」
「まあ確かに俺もそう思うよ」
和歌山はいつだってのびのびとしていた。
南国の太陽の下、住友本家の庇護のもとに素直に育ったその眼差しはある種の育ちの良さがあった。
たぶん、その育ちの良さが俺は好きな気がする。
「だいいち、好きだとか嫌いだとかそう言うのに理由いらないだろ」
「そうだけどさ」
火の燃え尽きた花火を洗面器に漬けて、次の花火に火をつけた。

「お前の判断を俺は否定しないよ」

それはたぶん和歌山が今一番欲している言葉だった。
「うん」
「だからいちいち悲しむなよ、俺がいるだろ」
「……まあね」
和歌山がほんの少し笑う。
めんどくさい男と一緒になってしまったな、と思うけれどたぶん俺はこいつとずっしょ一緒にいる運命なのだ。
そのめんどくささも含めて愛せないほど俺は小さい男じゃないので、和歌山が納得するのならこれぐらいの事いくらだって言ってやれるのだ。





海南と和歌山。
たぶん海南がえふいー世界で一番いい男だと思う

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北の大地の空と風

「はー……なんかえらい疲れてもうたわぁ」
ラグビークリニックが終わり、木陰にライナーズさんがバタンと横たわる。
「合同のラグビークリニックなんてそう滅多にあるものじゃないですしね」
「ほんまそれなぁ」
「せやかて若い子らは勉強になったんやないですか?」
「……レッドハリケーンズは若いからええけど俺みたいなおいちゃんには厳しいわぁ」
北国での合宿中に地元の子供たち向けのラグビークリニックをやろう、と言い出したのは誰だったか忘れたがこうして大人数で集まって行う事はそう多くない。
まして同じ大阪住みのレッドハリケーンズとライナーズさんが一緒になる事はあっても、神奈川に住む自分がそこに同席するなんて普通はあり得ないことだ。
「飲み物頂いてきましたよ」
ジュビロさんがドリンクの入った容器を人数分持ってきてくれて「ありがとうございます」と受け取った。
「あ、おおきにー!」
「いえ」
「こういう時は最年少が積極的に動きなはれって言われんかったん?」
「動ける人が動いたらいいんですー」
大阪コンビがわいわいと言いあうのを止めるべきか放置すべきか分からないジュビロさんを尻目に、自分は冷えたドリンクに口をつけてほうっと小さく一息ついた。
何度来ても北海道は良い。風は心地よく、食事も美味しい。
「……そう言えば、」
「ダイナボアーズなんかあったん?」
「いえ、もし良ければこの後懇親会をしようとスタッフが話していたのを思い出して。スピアーズさんには先にお話ししたんですが」
懇親会というよりもチームの枠を超えた飲み会のようなものをやりたいと漏らしていたことを思い出し、たぶんこのメンバーなら数人は来てくれそうな気がした。
「懇親会?!肉と酒はあるん?!」
「もちろん」
「ほな行くわ!おいちゃんも行くやろ?」
「おう、なんか野菜でも持ってこかな」
「僕も参加させてください」
「わかりました」
ドリンクはいったん蓋を閉めてすっくと立ちあがる。
こうしてみんなでワイワイと食事をするのは昔から好きなほうであったし、善は急げと昔から言う。準備は早くからしておくに越したことはないだろう。
「準備できたらご連絡しますので」
軽い会釈と共にそわそわした気分で足を走らせる。
ラグビーも、それに合わせる食も良いものだ。ましてこの心地いい北海道の風の下なら、なおさらに。




ダイナボアーズとライナーズとレッドハリケーンズとジュビロ。
なんか北見で一緒にラグビークリニックしてたというのが面白かったので。

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