もう日も暮れたというのに熊谷のまちはまだ暑い。
せっかくだからと浴衣を着てきたアルカスに対し、半分仕事で来た俺はチームポロシャツである。
「夏祭り感ゼロじゃん」
「何割か仕事出来てるからしょうがないんだよ」
そう言いながらアルカスが代わりに買って来てくれた屋台めしに口をつける。
何とも言えないチープなソース焼きそばの塩気が身体によくしみ込んでく美味しい。
「仕事って昼の巡行に出てたってだけでしょ」
「そのあと行政さんとか関係者のあいさつ回りしてて、戻る暇もなかったんだよ」
「はー、大変だねえ」
「アルカスも大学でお世話になるのやめてフリーターになればわかるよ」
オフシーズン中は自分と関わり深い立正大さんに養われつつ学生をやってるアルカスとは違うのだ。
と言うかあの人もよくまあずっとアルカスの面倒見れるよな……。
面倒になったので焼きそばを食べつつビールを飲んでいると、アルカスが「あ、」とつぶやく。
遠くからお囃子と光を纏った山車が四方から近づいてくる。
「叩き合いが来るよ」
四つの山車が向かい合い、自らの威勢を見せつけるようにお囃子をかき鳴らしキラキラと山車が輝いた。
この街に移ってから初めて見るうちわ祭りの叩き合いは例年より煌びやかだ。
何より観客もこの煌びやかな空間に目を奪われている。
「ワイルドナイツってうちわ祭りはじめてだっけ?」
「太田にいた時見に来たことはあるけど夜の巡行祭は初めて」
「じゃあ明日夜のひっかわせも見に行こう」
アルカスがにやりと笑う。
生まれながらの熊谷人であるアルカスが「本物のうちわ祭りを見せたげるよ」と言うので「じゃあ、お願いしようかな」と口にした。
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ワイルドナイツとアルカス
夏祭りといえば夜のイメージです。