目前の階段をバイクで駆け上がる迫力に観客が目を丸くしているのを、レヴズはにやにやと見つめていた。
「成功しましたね」
「よかったな」
レヴズの嬉しそうな声は観客の喜びを感じてるのだろう。
それを尻目に今日から女子セブンスの大会で北九州に行っているパールズの試合の様子をざっと確認していると「空返事ですね」とぼやかれる。
「ちょっと気になって」
「まあ気持ちは分かりますけどね?空返事はやめてくださいよ」
レヴズにとってのアザレアと俺にとってのパールズってだいぶ位置付け違うんだけどな、まあいいか。
「悪かったって。バイクパフォーマンス演出の受けが良くて嬉しいって話だろ?」
「分かってくれるならいいです」
「……レヴズだって、ジュビロさんやアザレアと試合被ったら様子気になるだろ?」
「そりゃ気にはなりますよ。 でも
うちの兄さんもアザレアも最高で最強だと信じてるので、僕の試合の後に本人から直接勝ったって聞く方が良いじゃないですか」
さらりとまっすぐな情愛がレヴズの口から飛び出してくる。
俺だってパールズの強さを信用してないわけじゃないけれど、どうしても心配や気がかりが湧いてくる。
(これが愛と恋の違いなんかな?)
遠く北九州の空でパールズを想う気持ちを考える。
「それに、彼女さんも自分のこと気にされて試合に負けるぐらいなら自分の事なんて微塵も考えずに試合に勝ってくれた方が良いと思いますけどね」
そう言いながらレヴズが指さすのは俺が前半無得点であることを表示した電光掲示板だ。
前半無得点の俺への挑発めいた言葉にちょっとムッとしてスマホの電源を落とす。
「後半逆転してパールズへのお土産にしてやるからな!」
レヴズは俺の言葉に満足したようににっこりと笑った。
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ヒートさんとレヴズさん。
きょうから北九州では太陽生命ウィメンズセブンスが始まります。