はっきり言って調子は良くない。
強いチームとの試合が続いてまともに勝ち点をあげられず、出来ることは最善を尽くすことばかり。
「久し振りじゃのう、坂」
「……今はレッドレグリオンズですよ、マーズあにさん」
血縁関係はないけれど尊敬の念を込めてそう呼ぶようになってもうずいぶんになる。
ようやく今シーズン一勝をあげたばかりのあにさんと違い、俺の方はさっぱり勝てないのが現実だ。
「にしてもホント急に髪がふわっふわになりよって、前はもっと直毛じゃったろうに」
「チームの名称の変化なんかで容姿が多少変わるのはよくあることでしょう?」
「まあなぁ」
そうして天然パーマになった髪を軽くなぜた。
チームの変化が容姿に直接影響するとは分かっていても急に髪質が変わるというのは予想してなかったので、このふわふわの髪には正直まだ慣れていないのが本音だ。
「……憂鬱そうじゃな」
「そりゃあ憂鬱ですよ」
「なら、勝てばええ」
「はい?」
「簡単じゃろう?」
「勝てないから憂鬱なんですけどね」
「ホントになあ」
彼は親譲りの美しいかんばせを歪めて自嘲気味に笑う。
「努力をすれば愛して貰えるが、勝てなければ降格するしかない。勝てる相手には確実に勝つしかわしらに道はないんじゃ」
ラグビーは戦力と戦術がすべてだ、番狂わせなんてめったに起きるもんじゃない。(だから日本代表が南アフリカに勝ったことが奇跡だったのだ)
それでも僕らはこの競技に恋をし、その道を追うことを選んだ。
「悪いが、勝ち点は貰っていくぞ」
「……嫌ですよ」
残りたい。
たとえどれだけ負け続けていても、ここにいれば成長できると言う事は肌で感じていた。
「なら、せいぜい苦戦させとくれ」
ブルーズマーズとレッドレグリオンズ。
ちょうど今日広島ダービーだったので(結果は確認済み)