*浦和と大宮の話。
久しぶりの大宮駅は人でごった返していた。
「ほんとにいつも混んでるよねぇ」
「うん、Яは嫌いじゃないけどさ。この人ごみ」
「今日は雪でどこも遅延してますからね、姉さんも僕も」
突然別の声が割り込んでくる。
「おや、宇都宮線。久しぶりじゃない」
「古河さんも相変わらずのようで」
「相変わらず大宮以北は駅員に丸投げしてるらしいけどたまにはうちにも顔出してよ。」
「小山と宇都宮はたまに顔出してますよ」
「そういう意味じゃなくて古河にだよ」
ため息をつくとどこからかすすり泣く声がした。
「・・・・・・・うーちゃぁぁぁん」
「姉さん?!どうかしたの?」
「信号壊れたぁぁぁ!」
「またぁ?!ああもう、姉さんのぶんの乗客も大宮まではどうにかするから本当に駄目そうなら振り替え発動とかやってよ!」
相変わらずこの姉弟は急がしそうである。
そういや本数で言えば姉のほうが多いのだけれど、たびたび大宮駅の信号が壊れているんだっけ。
「大宮駅の信号は呪われてるのかな?」
「そんなこと要ったら姉ちゃんトコは貧乏神か疫病神住んでることになるよ?」
「ああ、そうだっけ」
* *
1932年
『国鉄、あなた今なんて?』
『ですから東北本線と高崎線の一部列車は浦和駅を通過することにしました、と言いましたが』
『ふざけないで、どうして大宮が優先されるわけ?』
『大宮に分岐があるからだ』
『埼玉の中心はこの私よ!あいつじゃないわ!』
『浦和姉ちゃん・・・・』
『あんたも弟ぶらないで』
『昨年届いた埼玉県議長の物も読んだが、あれはいささか強弁過ぎると思う。
したがって大宮を分岐とする』
* *
「あの頃から浦和は大宮嫌いだったよね」
「きっと思うところがあるんだよ・・・・・きっと」
「血の繋がりは無いけど兄弟みたいなものだったしなぁ・・・・・ずっと」
ぼんやりと大宮駅の窓の外から見える雪にため息を漏らしていた。
「鉄道ひとつばなし」の「浦和駅の謎」を参考にしつつ書いてみました。
しかし浦和さんの初登場これって・・・・・。