*阪神淡路についての直接的な描写を含みます
スティーラーズからろうそくを貰った、今日チームのイベントで使った残りだという。
ちょうど家に帰るときだったので日暮れ後のリビングでそのろうそくの火を灯すと、部屋がぽうっと明るくなった。
(……29年前の夜に似てるわね)
1月17日になれば嫌でもあの景色を思い出してしまう。
血が抜けていつ動けなくなってもおかしくない身体でがれきの隙間を抜け出した日、いつ止まるとも知れないぼろぼろの身体でそれでもなお生きようと足掻いて、そして最後は職員の手も借りて抜け出した。
ぼろぼろの身体で必死に動き回った。全身が悲鳴を上げながらそれでもみんなと生きるために。
傷ついた神戸を再び美しい港町に戻そうと必死だった記憶がぐるぐると脳裏をよぎる。
ろうそくの火の揺らぎに問いかけてみる。
(私は、あの日傷ついた神戸の救いの一助になれたと思う?)
そして今も神の無慈悲によって家族を失い家財を奪われた人々が居る。
グルグルと答えのない問いが脳裏を回り続けている。
突如リビングの電灯がパッとついた。
「明かりもつけずに何してるんですか?」
「加古川、」
「……姉さんは今も神戸の街に灯る焔ですよ」
柔らかく微笑みながら、いつか私が加古川に言った言葉が返ってくる。
そうだ。神戸製鋼は神戸に灯るひとつの焔なのだ。
「夕飯かつめしにしたいなあと思ってかつとデミグラス買ったんですけどいいですよね?」
私の高炉の火を引き継いだ加古川は明るくそう問いかけた。
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神戸と加古川。あの日から29年です。
スティーラーズのろうそくはチームTwitterの灯篭点灯の残り物という感じです