周りはその人を指して女帝と評するけれど、俺は彼女をそんな風に思ったことは無かった。
「次屋、運んでくれ」
「はあい」
そうして台所に向かえば甘いミルクのかかったマンゴープリンがふたつ。
ガラスの器に盛られたそれは実に涼感あるおいしそうな代物だ。
「美味しそうだけど買ったもの?」
「いや、作った。此花が分けてくれた生のマンゴーが食いきれなくてな」
「住金のあの人に?」
「近所だからな」
ついでに余ったフルーツと水出しの緑茶でフルーツティーまで作ってくる。
うちは男所帯だったからこういうことをしてくるところに女性的な繊細さをいつも感じるのだけれど、本人が平然としてくるから口に出したことは無い。
「桜島はすごいなあ」
「少し練習すれば誰でもできる」
「そうかな?」
「ああ、私の認めた男だからな」
サラリと褒めてくる桜島のそう言うところは、きっと叶わない気がする。
「……お茶終わったら俺帰るね」
「わざわざお茶にまで付き合わせて済まなかったな」
ちゃんと書くのは初めてな桜島と次屋。