「神戸、お前さん背縮んだな」
此花がぽつりとそんなことを言うので「確かにそうかも知れないわね」とだけ返す。
「以前はおはしょりそんなに大きくなかったですもんね」
高炉を止めると背が縮むとは言われているがこうして見ると確かに以前より背が縮んだことを実感する。
おはしょりで調節はしたけれど来年の夏はもっと着丈の小さいものを用意したほうが良いかしらなどと考えつつ伊達締めに手を伸ばした。
「西宮、お前さん着付け大丈夫か?」
「大丈夫よ、この浴衣だって此花が仕立てに出したものだし」
「そう言えば葺合に頼まれて私と此花で西宮の着物選んだりしたものね」
「懐かしいなあ」
葺合は西宮が女の子の姿で現れた時、色々と戸惑って私や神戸に電話をいつも寄越してきたものだった。
成長してからは良妻という言葉の似合う気立てのいい子になったが私も此花もまだどこかでその頃の記憶が残っているのかもしれなかった。
「むしろ加古川の方が一人で浴衣着られないのよね」
「さっきも神戸が着せてたものなあ」
先ほどお手洗いに行った可愛い妹分は戦後生まれだからなのか着付けが苦手でいつも私が着付けてあげていた。
「そう言えば尼崎が場所取りに行ってるのよね?」
「うん、たぶん今頃は和歌山と海南に交代して食いもんでも買いに行ってるんじゃない?」
「弟使いが荒いわね」
「姉と弟なんてそんなもんだよ、神戸が出来たら行こうか」
文庫結びにくくられた帯を後ろに回すと加古川もお手洗いから戻ってくる。
「お待たせしました」
「いいのよ、まだ花火が上がるまでは余裕があるもの」
「じゃ、行こうか」
関西女子組、花火を見にいく