それは唐突な電話だった。
『パーティーしよう、全員地元の食品1つは持ち寄ること』
「……水戸殿、それはいきなりでありますね」
『いいでしょ、別に』
反論も言わせず電話を切った。
明日へ。
会場は水戸さんち。
「……ったく、いきなり呼び出すかねお前は」
「笠間は黙っててよ」
「水戸殿、」
そうやって声をかけると、遠くからあんこう鍋の匂いがした。
匂いの方向には北茨城・大洗・日立という珍しい取り合わせがいた。
「ひたちなかは何もって来たの?」
「寒ヒラメでありますが、兄上たちは?」
箱からおおぶりのヒラメを取り出して、自前の包丁を置いた。
「あの三人はアンコウ食べ納めだからって同じ奴持ってきたから」
「……北茨城と日立と大洗は作り方バラバラでありますが」
「いいのいいの、じゃんけんで北茨城方式になったから」
果たしてそれでいいんだろうかと思いつつ、ヒラメを裁き始めた。
***
今日は珍しく茨城県勢が揃う。
テーブルにはたくさんの食材が並びだす。
土浦の魚、桜川のすいとん、つくばのブルーベリーチーズケーキ、古河の甘露煮。
「取手殿、珍しいですね」
「うちにいてもテレビを見るぐらいしかすることなくて気持ちがふさぎ込んでしまうだけですから」
そうやって苦笑いしながらそれもそうかと思う。
今日は、3月11日。
あの日から2年が過ぎたのだと知らせる番組ばかりが放送される。
「ええ」
「明日へ向かわないと心が持ちませんよ、あと一切れ貰いますね」
「え」
一切れつまみ食いした相手は子どものように笑っていた。
震災から2年。茨城は元気です。