『お前のためだ』
生まれたばかりの自分にそう告げて、上司はこの村に原子力発電所を誘致した。
人間同士のつながりを巧みに利用して他の候補地を退けて、巨大な国有地を開発して原発が作られた。
臨界の時の青い光の鮮やかさは今も目に焼きついている。
「那珂」
「なんですか?」
「・・・・・・・上司の行いは間違いだったのでしょうか」
「間違いも時には必要ですよ、原発が無ければ今もまた東海村は寒村のままです」
発電所がもたらした膨大なお金は公共施設へと変わった。
新しいまちのお金は生まれたての僕を巨大な原発城下町へと育て上げた。
「いずれ、原発がなくなるとして僕はどうなるのでしょうか」
「それは誰にも分かりませんよ」
風が吹き抜ける。
そして、二度目の夏が来る。