良いあんこうとめひかりが手に入ったから食べに来ない?という連絡が来た。
いわきさんいわきさんと煩い事に定評のある北茨城からそんな連絡がするのは珍しく、風邪でも引いたのかと聞いたら怒られた。
特に断る理由もないので高萩と共に北茨城のもとを訪れる。
「でもなんでこの面子?」
「いわきさんは県絡みの仕事で福島市内にいるからそれ以外で呼びやすい面子呼んだだけ」
即答である。
適当な理由ではあるが気にしないことにした。
ホットプレートには潰したあん肝と味噌が炒められたもの、そこに捌いた柳肉(あんこう)と高萩の持ち込んだ野菜やキノコが一緒に入れられて煮込まれる。
「めひかり焼きあがりましたよ」
「……ここ高萩の家じゃないよね?」
「面倒見に来る頻度が多いんで慣れました」
まるで自分ちのような調子で焼きあがっためひかりの干物を出してくるので聞いて見ればこれだ。
高萩がいかにこの隣人に振り回されているのかがよく分かる発言である。つくつく隣でなくて良かったと思う。
ぬるめの燗と一緒に差し出されためひかりを齧ってみればしみじみと美味い。
めひかりと言うといわきの方が有名だがこの辺りでもめひかりは取れるのだ。
「日立きょう車じゃないの?」
「面倒だから泊まる」
「えっ」
「ついでに僕も泊まりますね」
「いやいやいや」
いつも散々振り回されているのだ、たまにはこれぐらいいいだろう。
「ああそうだ、今夜のアド街北茨城でしたよね?」
「そうだったテレビ!」
ばたばたとテレビの電源をつければちょうどいい時刻だ。
番組開始を知らせるオープニングが響くと、いい具合に鍋の煮える匂いがした。
今更のアド街北茨城ネタ。