東京・大手町。
此処には日本最強の祟り神の首塚がある。
そう、新皇・平将門である。
そんなところにちょいちょい顔を出す不思議な人がいる。
白衣の若い男だ、名前を坂東市と言う。
「下妻さん」
「こんにちわ、坂東さん。こんなところで会うなんて奇遇ですね」
片手には近くで買ったらしいお饅頭。
たぶん、お供え物だろう。
「下妻さんこそなんで、です?」
「近くに来る機会があったのでちょっと足を延ばしたんですよ」
「あっ(納得)」
お供え物のお饅頭を置いて軽く手を合わせる。
そんな折だった。
「下妻と坂東だー」
「……石岡さ、ん?」
「そうだよー、石岡だよー?」
「石岡さんって将門平気でしたっけ……?」
「んー、嫌いなのパパさん(府中藩)だから俺は平気なのー。国香さん殺された恨みないもん。でもねー、首塚と岩井方面には定期的に塩撒けってパパさんが言ってたのー」
よく見ると石岡の手には塩である。
ああ、この人本気で塩撒いてるな。首塚に。
「……それむちゃくちゃ嫌われてるじゃないですか」
「パパさんの伝言だからー、坂東にも塩撒くー」
そして石岡がいい笑顔で坂東の頭に塩を振りかけた。
にっこにこである。とってもニコニコである。
きっちり坂東の白衣の襟元握りしめてあるから逃げられない。
下妻は思った。
(これ本気で嫌ってるパターンだろ……)
言い伝えって怖いな、心からそう思った下妻だった。