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コーギーとお昼寝

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はつなつのかぜとなりたや

人間は正反対の人物に惹かれやすいというが、それはたぶん正しい。
私は間違いなくあの人に一目ぼれしたのだ。
その代償として、私は彼を殺したのだ。





はつなつのかぜとなりたや


1960年代、東京に一極集中する研究所の一部移転が問題となった。
朝鮮特需をきっかけにはじまった高度経済成長の真っ只中。
候補として挙げられたのは筑波山周辺と富士山周辺。
そして結果的に選ばれたのは筑波だった。

***

研究都市候補地という事を言い訳に陸の孤島だった筑波に入り浸っていたのは、仕事というよりも個人的な意思だった。
正直に言えば完全な恋愛感情によるもので、仕事を短時間ですべて終わらせて時々顔を出す生活は体力的にきつくとも当時は平気だった。今思うと恋とは恐ろしい。
「・・・・・・・おらが、研究都市に」
「ええ、正式に閣議決定しました」
「すげぇなぁ」
「なに他人事みたいに言ってるんですか、最終的にあなた死ぬんですよ?」
研究都市は将来的に地域発展のあおりを受けるため、代替わりすることが最初から決まっていた。
彼の体では地域の急激な成長を受け止めきれないことは明白だった。
「でもな、おらは東京にも会えたし、街のみんなのためになるんなら代替わりも良いなって思うんだぁ」
「さっぱりしてますねぇ」
「東京と会えてよかったべ、おらの次代は東京みたいに立派にさせてぇ」
古い着物を身にまとった筑波が私にそういう。
(綺麗な笑い方をするなぁ)
彼は底抜けに明るいのだが、優しい笑い方をするのだ。
「私も会えてよかったと思いますよ」
「東京との間にややできっとは思わねかったなぁ」
「・・・・・・え」
「だって、国の手も入んなら、ややこも東京の血ぃ引くべ?」
お互いにぽかんとして笑ってしまう。





はつなつのかぜになりたや。
そう呟くと「東京はすでにそうだべ」といわれた。
私はあなたのようになりたいと、思っていることはあえて胸の奥にしまった。







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