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コーギーとお昼寝

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ブルーベリー畑で捕まえて

あ、と思ったときにはもう下妻の怒りの平手打ちが顔に直撃していた。 「・・・・・・・本当にあんたって人は最低ですね」 下妻を、怒らせてしまった。

ブルーベリー畑で捕まえて

下妻は温厚で、「あー、ったくしょうがないですねぇ」と受け流してしまうタイプだ。
まあ、うん、今回は自分も悪い。
女装して見てといわれればさすがに怒るのはわかる、でもそれだけでは何かが足りないのだ。
「いくらなんでも親の形見の品そんなあっさり俺に上げて良いんですか?」
「・・・・・・・親の?」
「この浴衣、筑波の形見じゃないですか。なのに巾着にして・・・・・・」
確かに巾着に使った浴衣は筑波の残したものだ。
紺は自分よりも下妻のほうが似合う、そう思って巾着に仕立て直してもらったのだ。
(親のものを大切にしろって事?)
自分で導き出した結論はその一言に尽きた。
「でも、もう筑波はいないじゃない」
「親のもの大切にしろって言いたいんですよ」
そう言って怒る下妻にふと思い出したのだ。
かつて、筑波がくれた一本の木のことを。
「ねぇ、ブルーベリー摘みにいこう。」
「・・・・・・突然なんですか」

***

自分にとって筑波は血の繋がった父だ。
おっとりとした田舎育ちで、茨城弁の抜けない垢抜けない存在だった。
同じ時期を過ごしたのはほんの数年に過ぎないけれど、筑波はつくばとなる自分に一本の木をくれた。
「それがこのブルーベリー」
「ああ・・・・・特産品ですしねぇ」
「まだ県内で栽培が始まってもいない頃だけどね」
今でこそ茨城は全国2位のブルーベリー産地であるけれど、この木を貰ったのは市制開始の40年近く前のことだ。
まだブルーベリーも珍しい時代、この木を自分へと渡したのだ。
「・・・・・・で?」
「筑波がね『おめぇは新しい時代の子供だから、でっけくなれ。おらの持ちもんが古臭けりゃ、好きなようにしろ』って言ってたんだよね。」
「・・・・・・筑波自身の意思だったわけですか」
「そういう部分もあるよ、それにあの浴衣は下妻が着た方が似合うと思ったし。」
かつて言われた言葉を告げると、肩の力が抜けたように大きくため息をこぼした。
さっき渡した巾着を取り出して下妻が言う。
「これ、土浦さんが筑波に渡したものなんですよ。あの二人はすごく仲がよくて、土浦の浴衣を筑波に上げたりしてたんで筑波は土浦さんから何か貰うたびにニコニコ顔でうちに来てたんですよ。『上方の新作だ』って」
「へえ」
筑波と土浦が親しかったのは知っているが、下妻と親しかったのは初耳だ。
(羨ましい)
下妻は長く生きているから、自分なんかよりも色んなものを見てきている。
そんな事実に気づかされるたびにちょっとだけ嫉妬する。
「土浦さんに呪われるのだけはごめんですからねぇ」
「ふうん」
「・・・・・・・ブルーベリー、摘んだらどうしましょうか」
「好きにしてよ」
「ブルーベリーのムースにしますか、好きでしょう?」
「下妻の次ぐらいにね!」
嫉妬心も過去の思い出も全部なかったことにしたくて、ブルーベリー畑を全力で走り始めた。










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