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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

笹の葉さらさら

いつもなら響くはずのない足音で目が覚めた。
見慣れたマンションの一室はクーラーを効かせて少し寒いくらいだ。
「おや、ようやく起きましたか」
「……結城?」
「昨日から連絡が取れないので勝手に鍵開けて入りましたよ」
ほら麦茶飲んで、と差し出された麦茶を受け取ってとりあえず水分をとる。
昨日はずっと家の掃除やなんだを済ませていたのは覚えているが昨日の夜以降の記憶があいまいで、たぶん家の中で倒れてしまったのだろうと見当をつける。
「鍵渡しましたっけ?」
「合鍵の場所は把握してますから」
「……人には教えてないはずのに?」
「そこは、まあ、気にしたら負けですよ」
今度から合鍵の場所変えよう、と決心しつつも正直助かった。
たぶん結城が来てくれなかったら本当に危なかったかも知れない。
「ああ、上司にも連絡しておきました。家の中で熱中症起こして倒れてたと言ったら病欠扱いにしてくれるそうですよ」
「そうなんだ、ありがとう」
しかしつくづく思うけど、こうして七夕になるたびに世話を焼かれ続けているのもどうなんだろう。
ずっと向けられている過剰な好意を右から左へ受け流しているけど、これでいいんだろうか。


(……これで数百年やってきた訳だし、いいのかな)

冷たい麦茶がひんやりと染み渡る、七夕の日。


という訳で結城小山の七夕ネタ。今年も小山さんは七夕に体調を崩す。

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ガルパンは(経済にも)いいぞ

大洗「祝!鹿島臨海鉄道二期ぶりの黒字!!!!!!!!!」
大洗鹿島線「定期外旅客が増えたからね~ガルパン様様だよね」
鹿島臨海線「……そうだな」
大洗鹿島線「兄さん拗ねてる?」
鹿島臨海線「違う、ただなぜ今だに戦車を引っ張るシーンで俺が出てこないのかが不満なだけだ」
大洗「それは監督に言いなよ。まあガルパンのおかげでふるさと納税増えたし観光客も増えてありがたいよね。あ、あんこう焼き食べる?もうすぐ終わりだから買ってきちゃった」

「「食べる」」





しょうもない小ネタ。最近製鉄やジョカゲが忙しくて放置気味ですいません。

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音楽パロメモ

製鉄所組と土地擬人化音楽パロやるなら~っていう妄想まとめ。

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ナイトウォーカー6

「……さん、八幡さん!」
職員の呼びかけで目が覚める。
夕日の差し込む旧本館で私はうたたねをしていたようだった。
「立ったまま寝るなんて器用な芸当よく出来ますね」
「すいません、ご心配おかけして」
「職員一同の心臓止めにかかるの止めてくれませんか?あなたはここの神様なんですから」
「ここの神様は宿老でしょう」
「そう言う意味じゃなくて……」
茶化すようにそう告げてみるとまだ若い職員は呆れていた。
5倍は生きているはずの存在である私がこんな子供のようなふるまいをするなんてきっとこの目の前の青年からすれば予想外なんだろう。
「なんだか今日は寝すぎたのか眠いですねえ」
「じゃあもう寝てください」
「そうさせていただきますかね、ご迷惑をおかけしました」
今日はずっと釜石の夢ばかり見ている。
家に帰って寝たらまた釜石の夢を見れるのだろうか。
(それならば悪くはない、なんて)
子どもみたいなことを考えてしまった。
ずっと私の唯一だった人は覚えているだろうか?
私に贈ってくれたあの万年筆の事を。

****

1902年(明治35年)官営製鉄所は僅か1年で官営製鉄所は操業停止に追い込まれた。
原因は想定よりも少量しか銑鉄を生産できなかったことによる赤字で、その原因追及のため調査委員会が設置されて周囲はにわかに騒がしくなった。
慣れ親しんでいた外国人技師たちの解雇や新たにコークス炉を増設することになったことに起因する身体の変化は私の精神には苦しいものだった。
無理やり内臓を素手で弄られるような痛みを紛らわすのは、釜石との手紙のやり取りだけだった。
まだ未成熟の私の体にはそれは激痛であり、それにただ耐え忍ぶことしかできなかった。
その苦労が報われるのは3年後の事だった。

1904年(明治37年)2月。
「……官営製鉄所再開?」
「ああ、この度日本は露西亜に宣戦布告をしたのは知っているだろう?」
「新聞で読みました」
「この戦争で勝つには鉄が必要だ、コークス炉も完成して安定した鉄の生産が可能になった事を踏まえて4月にもう一度火を入れる」
その言葉に私の心は高揚した。
ようやく私はこの場所の付喪神としての働きが出来るのだ!鉄を生み、この国の柱となれる!自らの生まれた理由を果たす以上の喜びはそうそうない、
この喜びを釜石に届けたかった。
手紙越しに私をずっと案じてくれた師の姿がよみがえる。
部屋を出て私は早速手紙を書いた。
伝えたいことが便箋にあふれ出て来て、それを無理やり糊で止めて手紙を出した。
返事はすぐに届いた。
『おめでとう』
たったそれだけの一筆箋とお祝いにと添えられた薄い桜色の万年筆を私はぎゅっと抱きしめた。


(この万年筆は大切に使おう)

胸の奥の密やかな決意と共に私は冬の終わりの空を見上げた。



-終-

八幡過去編完結です。
そのうち神戸の過去編を書きたいと思ってるのですが、いったいいつ書けるのかは謎です。

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ナイトウォーカー5

元々釜石の帰郷は出銑が終わったらという事になっていて、出銑に失敗しようが何だろうがどちらにせよ帰る日は決まっていた。
出銑が失敗に終わり職員一同が上からの対応に追われていたので釜石から来た技術者らも帰郷の一度日付けを伸ばして対応に当たったが、どちらにせよ一度帰らねばならないことは明確だった。
釜石の帰郷が近づくにつれ、幼い私は壁に当たり散らすようにガンガンとぶつけていた。
(そう言えばあの壁のへこみはこの頃に作ったものでしたっけ)
ストレスをためるとすぐ壁に当たるものだから煉瓦がだんだんすり減ってへこみになったんだ、と思い出して苦笑いすらする。
それでも他人に危害を加えなかったのは付喪神として自分よりも弱いものに手を出すのは卑怯だという矜持だった。
釜石の帰郷前夜の真夜中、私はその日は壁をガリガリと削って八つ当たっていた。
「……八幡?」
月の灯りだけが差し込む私のベッドの横で寝間着一枚の釜石が声をかけてきた。
「眠れんのか?」
どう答えたらいいのかも分からない幼い私はぷいっと視線をそらすので、釜石は「壁の事は怒らんから正直に言うてみぃ」と付け足した。
削りかすの落ちたベッドに腰かけて目線を合わせた釜石に「ほんとうに?」と尋ねれば「おう」と返してくる。
少し思案をした後「……ここのところ、眠れないです」と告げると「やっぱりか」と呟いた。
後になって釜石にこの時の事を聞いたことがあるが、釜石は気づいていたのだけれど元から遅寝だったので眠くないのか眠れないのかの判断がつかなかったと言っていた。
「散歩するか」
「はい?」
「安眠の妖精を探しに行くんじゃ。ええっと、何と言うたか……」
「ウィリー・ウィンキーですか?」
「そいつじゃ」

****

初春の八幡の村に出て、何のあてもなく歩き出す。
ぽっかりと浮かぶ満月は私達二人きりの夜道を明るく照らしてくれる。
釜石とつないだ手の熱だけが私に伝わってくるぬくもりだった。
「釜石、」
「うん?」
それは民家の軒先に咲く桜の木だった。
黒塗りの塀を超えるほどの大きな桜の樹は月明かりの下で幽玄に咲き誇り、満月の中で輝くようだった。
「……この時期でも咲いてるのか」
「釜石のところではもっと遅いんですか」
「ほうじゃな、だいたい4月の終わりか5月の頭ってところか」
「じゃあ、そっちで桜が咲いたら教えてください」
「そんくらいならいくらでも」


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