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コーギーとお昼寝

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えふいーにおけるカプまとめ

だいたい全部自分のためのまとめです。
たぶん読まなくても本編楽しめると思います。

2016.8.30追記と修正
2017.8.4また追記と修正

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大阪の桜

久しぶりの大阪の街には満開の桜が待ち受けていた。
「小倉さん」
「ひさしぶりたいね、和歌山」
時々、息抜きにこうして大阪まで行くことがある。
今や小倉から新大阪まで新幹線で2時間もあれば行く事が出来る、毎日あの偉そうな元官営の顔を見ないとならないのだからこれくらいは許容範囲だ。
自ら高炉技術を教えた和歌山は自分が大阪に行くというとこうして迎えに来る。
ついでに飯も奢ってくれるので大阪に行く和歌山に一声かけるのは食費を浮かすためなのだが本人のプライドのために黙っておく。
「飯食っとーとか」
「ううん、まだ食べてないよ。うどんでいい?」
「よか」
大阪の街をふらふらと渡り歩きながら、和歌山も随分とでかくなったものだと思う。
住友に連れてこられてすぐに半ば押し付けられるように育てた弟子もこんだけでかくなれば立派なもんだ。
『私らが求めてるのは高炉技術なんだ』
最初に出会ったとき、じっと此花はこちらを見据えて言った。
『お前が住友に馴染む気が無かろうがそれはお前の勝手だ、仕事さえ確実にこなしてくれれば何をしてもいい』
「……今思うと、よく此花もお前を俺に預ける覚悟しとったな」
「何の話?」
「昔の話」
「信頼されてたんでしょ、きっと」
そうなのだろうか、と考える。




(まあ、これも信頼なのだろうなあ)

うどん屋に入る和歌山を追いかけながらそんなことを考えていた。


小倉さんと和歌山さん習作。

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神様は恋に落ちない:7

会議に参加させられていた神戸と小倉は終始不機嫌だった。
司会進行役の八幡は二人の不機嫌を徹底的に無視しながら粛々と会議が進められる。
「釜石さんは、合同に加わるんでしたっけ?」
「国策じゃし断る理由が無いもんで。うち(神戸製鋼)と浅野系列は最初から加わらんと言うてるのになんで呼ばれてるのか」
「ほんとですよ」
この製鐵合同に加わるのは今回の中では自分と輪西と八幡の三人、ほとんど関係のない神戸や小倉からすればわざわざ東京まで行かなければならないなんて嫌がらせに近い。
小倉に至ってはもはや不機嫌を通り越して殺意に近い、普通に考えれば鶴見の浅野造船が行く方が早いんだから当然か。
「……小倉、あなたその殺意こっちに向けるのやめてくれませんか」
「ならさっさとこの会議終わらせて帰らせてくれればいいったい、最初から参加せんって言ってるうちを呼ぶ理由がねえっちゃろ」
「きさん誰に言うとるか分かっとるか?」
ああこれだめな奴だ、と瞬時に察した。
八幡から標準語が抜けるのはだいたい理性の歯止めが利かなくなりだした時だ。
「だいたいこげな嫌がらせみたいな会議やっとるほうがおかしか」
「こっちの言うとることは国の言い分じゃ、なんかきさんくらすぞ!」
「おー良か良か、こっちもきさんくらしとぉてしゃーなかったけんいくらでも買うちゃる。外出んね!」

「八幡、もう会議はここで終いにしとけ。」

「いや何言ってんですか」
「小倉は長旅で疲れとろう、必要なもんだけ渡してみんな休ませとけ」
「……分かりました」
溜息を吐いて会議の概要をまとめた書類を配り全員目を通すことを念押しされた後、三々五々に去っていく。
二人きりになった会議室で八幡が呟いた。
「いつもならもっと早くに止めたでしょうに、まだ調子悪いんですか」
「まだ二月しか経っとらんからな」
「これでも本来の予定より一月遅らせての開催だったんですけどね」
「じゃろうな」
本来この会議は4月の半ばにやると聞いていたがこっちの事情を鑑みて一月遅らせたのだ。
一月あれば少しは落ち着くだろうという八幡の目論見も外れたようだ。
「少しこっちで休んでから帰った方が良いんじゃないんですか?」
「いや、できれば早めに向こうに戻りたい」
「……たま菊ですか?」
その言葉にはあえて何も返さなかった。











あれから何年の月日を経ただろう。
たま菊は未だ行方不明のまま永い年月が過ぎ、今に至っている。
昼のやませの名残かまだ肌寒い夜の街を抜けて初夏の海辺にたどり着く。
釜石の海は命を呑む海だ。
その海の目の前で人々は暮らしを営み、自分もまた製鉄所の付喪神としての暮らしを紡いできた。
やませの出た日はこの海に白菊の花を投げ入れる。
この三陸・釜石にも夏が来たのだとたま菊にも教えたかった。
この海に呑まれたたくさんの命の供養などという殊勝なものではない、ただただ自己満足のような行いだ。
「……届いてんだか分からんなあ、この白菊も」
脳裏によぎるのはたま菊の笑顔だけだった。

-終-

釜石さんの初恋のお話。
こんな感じのことがあったので釜石さんは恋をしないんだよ、という話でした。

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神様は恋に落ちない:6

1933年、3月3日。
遠雷のような音を聞いた時、脳裏をよぎった嫌悪感はその日まさしく正夢となった。
のちに昭和三陸地震と呼ばれる津波に釜石の町はさらわれた。
残されたのはまっさらな三陸の大地と生き残った人間たちだけであった。

****

1933年、5月。
製鐵合同の誘いを受けた11社による集会が東京で開かれることになり、そこに自分も呼び出された。
「……なんでうちまで呼び出されるんかしら」
ぽつりと隣に座ってにいた美女が関西訛りで呟いた。
鮮やかな真紅のロングドレスに身を包んだこの豪勢な美女を見て、はてこれは誰だったかと思い起こそうとするが名前が出てこない。
「釜石さん、去年の出雲以来ですわね」
「あ、ああ……」
「そちらは大変だと聞いてますけど、大丈夫でした?」
「まあ色々、えっと、」
「あら、私ですわ。神戸製鋼所です」
そう名乗られてようやく思い出す。
この頃の神戸は苦労の多かった過去への反動のように華やかな服装や令嬢のような言葉遣いを好むようになっていた。
現在はこの派手好みも少し落ち着いたが、この頃は育ての親である鈴木商店の影響か南国風の鮮やかな色をよく着ていた。
「少し見ない間に痩せましたか?」
「そうかも知れんなあ」
「私で良ければ話聞きますわよ?」
どうぞ、と煙草を差し出してくるのでありがたく譲ってもらう。
燐寸で火をつけて煙草をひと口飲めば少しだけ気が緩んだ。

「……恋仲の女が、津波に呑まれて行方知れずでな」

ぽつりと呟くと神戸は静かに頷いた。
「相手は人の子なんだが、よぉ笑う奇麗な女でな。歳はまだ15だった。
今だに生きとるのか死んどるのか知れん、そのせいかこの頃どうも頭が回らんくてな。いちおう人前では普通に振る舞っとるつもりだったんじゃが」
「それはお辛かったでしょうね」
「辛いってもんじゃない、悪い夢を漂っとる気分じゃ」
譲ってもらった煙草が一本燃え尽きる。
神戸はただ静かにその会話に耳を傾けていた。
やがて会議室の戸が開きつかつかと八幡が入ってくる。
「全員揃ってますね?それでは、会議を始めます」



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神様は恋に落ちない:5

たま菊と恋仲になったのは夏の事だった。
姐さんから頼まれたお使いの帰り道だというたま菊とぼんやり街中を歩いていた時だった。
「凛々千代さま、」
「うん?」
たま菊がきゅと着流しの袖をつかんでくる。
それがなんとなく『このまま帰りたくない』というたま菊の意思表示のような気がして、ぽつりと「離れとぉ無いな」と呟いた。
たま菊ははいと囁くような声で返事をしてきた。
(ああ、この娘は同じ気持ちなのだ!)
喜びは胸の奥にしまい込んで平静のふりをして声をかけた。
「店の前まで送ろう、今日は人が多いからよお捕まっておけよ」
「はい、凛々千代さま。」

たま菊とはそれ以降何度も逢瀬を重ねた。
寝静まった真夜中に店を抜け出しては海や神社で待ち合わせ、他愛もない時間を過ごした。
日々少女から女へと化けていくさまを見ながら『凛々千代様』と呼ぶその声と姿をいつくしんだ。
不穏な世間の流れなど何も恐ろしくは無かった。
ただただ幸福な時間だけが流れてゆき、夏が終わり冬が終わり、気づくと1年が過ぎていた。

****

1932年、冬。
八幡から分厚い手紙が届いた。
内容の半分は『来年施行される日鐵法の準備に巻き込まれて忙しい』という恨み節で、苦笑いをこぼしながらも本格的に国によって製鐵合同が推し進められていくのだということを痛感する。
今日は少しばかり長めの返事を書こうか、と封筒と無地の紙を取り出す。
『八幡へ。
釜石の地にもついに初雪が降りだし本格的な冬支度の季節が来ています、雪の降らない九州がこの時ばかりはうらやましい。そんな季節です。
さて、お前さんの手紙では製鐵合同の新法の準備に巻き込まれたとかで相当苦労しているのだと伝わります。
こちらも元官営の身の上、そのうち巻き込まれるだろうと思うので頑張れとしか言いようがありません。とりあえず泣くな。』
ふと筆が止まる。
官営として国を背負ってきた八幡にとって自分が民営になるということは八幡の矜持にも関わる事であり、あまり下手な慰めはしない方が良いような気がした。
結局思いついたのは『製鉄の都・釜石と素晴らしい外国人技術者に育てられた八幡の鉄は世界に誇れるものになると確信している』という言葉だった。


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