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コーギーとお昼寝

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大舞台で待ち合わせ

『決勝進出おめでとう』
ワイルドナイツからの第一声はそれだった。
試合後の浮かれ騒ぎのなかでかかってきた電話の声はどこか熱があった。
「ありがと、また今年もこの組み合わせだな」
『順当でしょ』
「そうだけどさー、試合前にLINE送ってきたろ?決勝で待ってるって。ちょっとは負ける可能性考えてたろ?」
『ちょっとだよ、8割がたお前が勝つかなって思ってた』
「残り2割は負けかよ」
『勝負は時の運だしね』
それを言われると言い返せなくてちょっとムッと来た。
「俺は100パーお前が勝つと思ってたんだけどなー」
『そうなんだ?』
「おう、お前のラグビーをよく知ってるのは俺だしな!」
しばらく妙な間が空いて『……一瞬求婚しそうになった』と呟いた。
「お前と一緒になったら試合できないじゃん」
『そうだけどさ……俺の純情もてあそんでない?』
「純情もてあそんでないって、一番のライバルとしてパナソニックワイルドナイツをよく知って居るって自負があるだけだよ」
俺の言葉にワイルドナイツは深い深い溜息を吐いた。
果たして俺は呆れられるようなことを言ったか?と疑問が沸く。
『……まあいいや、23日楽しみにしてる』
「俺も!」


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サンゴリアスとワイルドナイツ。

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今日の反省会

「規律って大事よね」
ラグビーの試合を見終えた姉さんは天井を見ながらそう言った。
大方の予想を裏切って負けてしまったことに姉さんは落ち込み気味のようだった。
「ほんとですね」
正直、私も落ち込んでる。
確かに先制点取られはしたけど向こうが一発退場で14人になってたから大丈夫だろうと信じてたのに!!!!まさかんなにパスミスや反則取られるなんて!!!!
今頃撤収作業中であろう静岡のスティーラーズくんの顔を思い出しながらなんとも言えない気持ちになる。
「一件の災害の裏には300件のヒヤリハットがあるって言うわよね」
「ハインリッヒの法則ですね」

「ラグビーもスティールワーカーも同じ!ヒヤリハットが悲しい結末を生む!
そうだわ、来週はヒヤリハットゼロ週間にしましょ!!!!!」

そう叫ぶ姉さんの目は若干正気が失われた目をしていた。
「社長に話してくる!」
「姉さん今日日曜日です!!!!!!」
ヒールとは思えないほどの俊敏な動きで本社へ向かう姉さんを素足で追いかけるハメになり、大変な目にあったがこれはスティーラーズくんのせいにしようと心底思った。

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2度目の奇跡は呼ばせない

これはゾクゾクするほどにいい試合になる、と開始10分で確信した。
真剣での立ち合いのようにギリギリの鍔迫り合いの様な試合で、個人技で魅せてきたスティーラーズさんに規律と連携の徹底によって抵抗し続けたスピアーズ。
相手のミスを誘発させる技量も、個人技の極みのような華麗なキックも、全てが最上級。
「これはどっちが勝っても楽しいやつだな」
勝った方が来週の対戦相手だと思えばよりワクワクも上がっていく。
一瞬たりとも見逃したくないと思える80分の攻防戦。

制したのは今まで大舞台と無縁だったスピアーズだった。

すぐに感想を言いたくなってスマホを引っ張り出し、即通話ボタンを押した。
『はいはい?』
「さっきの試合めちゃくちゃ面白かった!」
『何、それ言うために電話してきたの?!』
「当然じゃん!面白いもん見せて貰ったお礼言いたくもなるじゃん』
『……うちの人たち、カッコいいでしょ?』
電話越しの声色はいかにも嬉しそうでドヤ顔がありありと想像できるほどだった。
「うん。うちの人たちほどじゃないけど」
『そう言うとこー!!!!!あ、スティーラーズさんが話したいって言うからハンズフリーにするね』
ピッという音とともに『もしもーし』と言う声がした。
「お疲れ様ですー」
『スピアーズくんなー、めっちゃ強なってるから寝首かかれんように気をつけなはれや!』
チャンカワイのモノマネとともにスティーラーズさんなりにスピアーズくんをたたえてくる。
普通なら勝てただろう相手に負けるのは悔しさもひとしおだけれど、ここでちゃんと相手を称えられるあたりは先輩なんだろうなあと思う。
「でも誘発抜きにしてもミス多かったと思うんですけどね」
『そう言う日もあるわ!とりあえず俺はねーさんに叱られてくるから来週サンゴリアスが落とすの楽しみにしとくわ〜ほな、またな』
『俺もドーンとそっちにぶつかってそのまま倒して決勝行っちゃうから来週よろしくね!』
「何楽しみにしてんですか!ちょ、ちょっと!!!!!!!」
俺の意見も聞かずに電話が切れる。
なんか盛大に煽られたせいか余計に勝ちたくなってきた。
「……トレーニングしてこようかな」
来週勝って最後の優勝カップをうちへ持ち帰るために。



サンゴリアスとスピアーズとスティーラーズ。
すごい……すごい試合でしたね……。

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My Way

仕事から練習までの短い隙間時間に、香椎浜に向かうとレッドスパークスは海を見ていた。
小さく何かを口ずさみながら曇りなき空と美しく輝く芝生を眺めていた。
「レッドスパークス」
「ブルース、どうしたんですカ」
「……天神で仕事があったけんお前さんの顔ば見に来た」
それは嘘じゃなかった。ただ会いに来たのは一つの気がかりが合ったせいだった。
レッドスパークスの目はいつもの底抜けの明るさと違う薄暗い色を帯びていて、その目には見覚えがあった。
この世を去った神戸の友と最後に会ったときと同じ眼差しだ。
「そうでしたカ、てっきりワタシ心配されてるのかと思いましたヨ」
無理に笑おうとして微かに口角が引きつっている。
「なんでこれからが一番楽しいときに退場しよると」
「親の命令ですからネ、だぁれも相談してくれずに突然活動休止ーって」
「誰も?」
「うちの親も向井サンも部長もだーれも言ってくれなかったんですヨ?酷いですよネー」
いつもと変わらないどこかおどけたその口ぶりは真意を感じることが難しい。
だから果たしてその相談なしで、というのが親心であったのか急すぎて余裕がなかったのかもはかり知ることは出来ない。
じわりと目から涙がにじむ。
日が暮れて空がオレンジ色に染まっていくのが、滲んだ目から見えた。
「まあもしかしたらシーウェイブスさんやファインティングブルズくんとこみたいにクラブチームって可能性もありますシ、まだ泣くには早いですヨ?」
「そげなこと、言うな」
ぐりぐりと目元を拭いてその赤い目を見る。
何かを諦めたような赤い眼差しが今だけはひどく、憎たらしい。
「それにもしもの事があっても、ブルースや先輩やナナがワタシの事覚えておいてくれるでしょウ?


ワタシの道を行き切った男として、ネ?」

夕日の向こうから船の汽笛が聞こえた。
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ブルースとレッドスパークス。
廃部報道でまだ情緒が落ち着かない。

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僕の愛するブラザーフッド

一発勝負の試合に負けた事よりも、敵としてであってもラグビーでの再会を喜びただ抱き合って泣いた2人の姿に泣いてしまう。
曇天の江戸川区立競技場で敵として再会した唯一無二の親友二人の間には誰も立ち入らせない空気があった。
「お疲れ様でした、シャイニングアークスさん」
そう言ってイーグルスがポケットティッシュを渡してくれ、それで目元と鼻をぐりぐりと拭う。
イーグルスの方も目が潤みこそしているが泣くのは堪えているようだ。
「……今になって後悔が深まってきますね」
「移籍のことですか?」
「お互い事情があったとは言え急な移籍で離れさせてしまいましたからね」
二人の関係の深さは周知のことだったし、それも一番近くで見てきたのは僕だという自負もある。
『情がなければ人を理解し切れないが人間に深く情を入れ過ぎれば辛くなる』
かつて父にはそう言われたけれどこうして二人の姿に泣いてしまう僕は情を向けすぎているのかもしれない。
「シャイニングアークスさん、友情は距離で壊されるものじゃありませんよ」
「そうですけどね」
イーグルスは二人の姿を穏やかに見守る。

「ナキに日本最高の舞台、見せてあげてくださいね」

それは僕の心からの願いであった。
事情から手放した男への最後の花向けと言い換えてもいい。
「当然ですよ」
イーグルスの声には覚悟が滲んでいた。

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シャイニングアークスとイーグルス。
試合後に抱き合うナキさんとしょけさんに泣かされたオタクいっぱいいると思うんすよ。

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