「長良川の鵜飼いって一年中やってるわけじゃないんだな」
何となく寝付けないから、という理由でサンゴリアスと夜の岐阜散歩に出ることになった。
ホテルを抜け出し、繁華街の賑わいを味わい、月夜のふもとに輝く岐阜城を拝み、気づけば長良川の岸辺に腰を下ろしていた。
「10月から来年5月までは休みなんだよ」
「じゃあどう頑張っても見れないじゃん、オフシーズンだし」
サンゴリアスがどこか不満げに声をあげる。
遠征ついでの観光であれが見れないこれが無いなど文句を言うな、と言い返す。
「そうだけどさ」
「明日、お前が試合に勝ったら飛騨牛のみそ焼き奢るって言ったろ」
「そうだったわ、逆に俺が負けたら栄のハブでコラボドリンク全部奢るんだっけ」
サンゴリアスが「まあ俺が勝つけど」と不敵に笑う。
生まれて一度も挫折を味わうこと無く健やかに生きてきた若造のくせに、こういう時に強者の風格を滲ませるのが上手だ。
「岐阜はセカンダリーホームみたいなもんだからな、地の利はこっちにある」
「そんな申請してないでしょ」
「愛知県民みんなそう思ってるぞ」
ちょっと大げさに言う愉快な煽りあい。
川辺の冷たい風と夜半の月がシリアスで愉快な空気を盛り上げてくれる。
「ま、決戦はもう少し先だけどね」
「そうだけどな。ぼちぼちホテルに戻るか?」
「うん、寝よ寝よ。さっさと寝て英気を養わなきゃね」
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ヴェルブリッツとサンゴリアス。岐阜での試合楽しみですね。