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コーギーとお昼寝

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おかねがない

このところ八幡さんがずっと地元にいる。
出張という出張が昨今の流行り病によりすべて中止となり、いつもなら東京と北九州を往復してるひとがずっといるのだ。
「あー……」
ゾンビのようなため息を漏らし鬱々とした様子の八幡さんに小倉さんが『どうすんだあれ』という顔で私を見た。
再び八幡さんの様子を見るが、八幡さんは鬱々とした雰囲気を隠さないのであれは相当やられている。
私はどうにもならないですねと首を振った。
「戸畑、お茶ください」
「あ、はい」
小倉さんと一緒に給湯室に行き、冷蔵庫に入れておいた水出し緑茶をグラスになみなみと注ぐ。
私が水出しのお茶を渡すと小倉さんは京浜さんから頂いたというありあけハーバーの箱を開けてくれた。
「あんなのがずっといたら職場の士気に関わるんじゃないか」
「重症ですしね」
いつもはいない人がいるという事に対する違和感はもう慣れた。
しかし問題はずっと釜石さんに会えていないという事に対する鬱屈がすごすぎて、周りが引きずり込まれそうになるのだ。
「簀巻きにして玄界灘にぶち込みたい」
そうぼやきながら水出し緑茶をもう一杯飲もうと冷蔵庫を開ける小倉さんに「とりあえずむこう戻りますね」と告げて給湯室を出た。
「戸畑、」「はい」
水出しの緑茶を差し出すとパソコンの画面には本社から送られた四半期決算や今期営業利益の見通しに関する書類だった。
流行り病のあおりを受けて大幅に収益が落ちた決算俵はどこもかしこも真赤だ。

「……そっちだったんですね」

「戸畑、今のどういう意味ですか」
「いえ」
どうも北九州にいる時は頻繁に釜石さんの話をするせいで忘れかけていたが、この人もちゃんと仕事はするのである。


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戸畑と八幡と小倉。
苦境の鉄鋼業、マジがんばれ……

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おいでよアークス学園!

ある平日の昼下がりの船橋。
「ねむ……」
駄目だこりゃと仕事道具を所定の場所へ戻し、眠気覚ましのブラックコーヒーを入れに給湯室に行くとウォーターサーバーの水タンクが切れていた。
せっかく冷水と熱湯が出るウォーターサーバーになったのに水がなきゃ意味がない。
仕方なく水タンクをウォーターサーバーに差し込んでお湯が沸くのを待つ間、スマホに来ている連絡の類を確認するとアークスからLINEが来ていた。
(珍しいな、こんな時間にLINEなんて)
届いていたメッセージをたっぷすると、そこにはなぜか学生服姿のアークスがいた。
思わず自分の目をこするけどやっぱりスーツじゃなくてブレザーだ。
ニットの胸元に青い校章がついてるし、靴もひも付きの革靴ではなく紐のないローファーだ。
思わず電話をかけるとすぐに電話がつながった。
「LINE見たけどあの写真何?!」
『スピアーズでしたか、というか挨拶もなしにそれ聞くんですね』
「俺の眠気が飛んだもん!なにあれ?!」
『ああ、チームのバリューアップ活動の一環で学生風の服装で動画を撮る企画が進行してまして』
「そういう謎企画ってグリーンロケッツの担当じゃないの?!」
最近のアークスはぶっ飛んだ企画が多かったけど、もうこれは俺の理解を超えてる……何で社会人に学生服着せようとしてるの……?
思わず宙を見上げたけど、あるのはただの切れかけた蛍光灯だった。
『まあそうですけどね、面白い企画をやれば注目されて、私や選手も注目されますから』
「うん、まあそうだけど……というか、まさか今度入団するレイドローに学生服とか……」
『検討中、とだけ。それでどうですか?』
本人はいたって正気なようでフラットな声で答えられた。
楽しいことは好きだけど、アークスのボケって真顔で想定外の方向に行くからはた目からするとほんとにビビるのだ。
「インパクトはあると思うよ」
『これでキンプリとかBLやれば受けますかね?』
「何考えてるの」
真剣な声色でぶっ飛んだことを検討するアークスに、ちょっと前のお堅いぐらいに真面目なアークスが恋しくなった瞬間だった。


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スピアーズとシャイニングアークス。
最近ちょっと企画力がぶっ飛びすぎて私の脳がおいつきません。

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うなぎよりもうしのにく

本日、土用丑の日。
世間はうなぎだうなぎだと騒ぐ中、俺の姉は一人ステーキをむさぼっていた。
「牛の肉だね」
「うのつくものだし問題はないだろ、それにうなぎの旬は冬だぞ」
自粛の風潮も少しは落ち着いたからと久しぶりに一緒に食事しようという話になったのはいいけど、どうせなら普段食べないうなぎが良かった。
「ザブトンがいい色になってきたな、お前も食え」
いい色に焼けた希少部位の肉を差し出してくるので俺は大人しくそれを塩で食う。
上質な肉の脂がじわりと舌に広がって溶けていく。しみじみと美味い。
「美味い……」
「だろ?あ、すいませんビールの大瓶追加で!」
肉とビールと時々美味いナムル。幸せだし精はつく。
ああ、でもやっぱり少しうなぎが恋しい。
「尼崎」
「うん?」
「土用丑の日って言うとどうしても夏のイメージだけど、土用は年に四回ある。そして最近、寒の土用の丑の日にうなぎを食うってのがある……あとは分かるな?」
「冬にうなぎ驕ってくれるの?」
「お前が仕事頑張ればな」
冷たいビールが俺のジョッキに注がれる。
「夏の土用が終われば立夏、夏も盛りになる。ビールと肉で乗り切んぞ」
実にいい笑顔でほくそ笑む俺の姉は実にイケメンだった。



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尼崎と此花ネキ。

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悪夢のあとを生きている

地響きのような着弾音、燃える街で人々を防空壕に押し込んでいく。
とにかく、一人でも生き延びさせる。この街の未来の守るために。
その焦燥感だけが傷ついてぼろぼろの身体を突き動かす。
火傷のひりひりとした痛み、骨が折れたような痛み、生ぬるい血が垂れる横っ腹。動くべきじゃないと分かってても体は焦燥感で動いている。
燃え盛る街を彷徨う子どもと目が合った時、頭上からグラマンの音が耳を突いた。
その子供を腕に抱えて、抱えて……

目が開いた。きょろきょろと視線を回せば何度も暮らしている家だった。
重い身体を動かすとデジタルの目覚まし時計は2020.7.14という日付を示していて、あれが夢だったと分かった。
悪夢を見ることは何度もあったけれど慣れることは一度だってない。
その証拠に寝間着が汗で湿っている、手足も頭もひどい寝汗でじっとりとして不愉快だ。
帯を解いて肌着も脱ぎ捨ててお湯で湿らせた濡れタオルで腕をぬぐうと、少しは寝汗もマシになる。
誰かの声を聴いて甘えたいような、けれど最年長として甘えてしまうべきではないような、複雑な思いを逡巡させながらゆっくりと全身を濡れタオルで拭っていく。
身体にいくつか残る古傷は皮膚が薄いせいで青ざめたようになっていて、温かい濡れタオルでようやく血の気を取り戻した。
全身をぬぐい終えると新しい下着と着物に着替え、ついでに薄い長羽織も着ることにした。
汗だらけの寝間着と下着、枕カバーは洗濯した。もっとも、今日洗ったところで梅雨だから夜までには乾かないだろう。
案ずるように猫の姿をしたサッカー部が近寄ってくる。
虎舞の虎によく似た黄色と黒の毛並みは自分のところの部活たちに共通の姿であるけれど、人型を取れないまま自分のところにいるのはいまやこの子だけだ。
「……長く生きると、いいことも増えるがそれ以上に嫌なことが増えてく気がするなあ」
よしよしと撫ぜれば励まし方が分からないのか全身を自分に委ねてきた。
その毛並みを撫でながら今日という日を、想う。



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釜石おじじと悪夢の向き合い方。
釜石艦砲射撃の日に寄せて。

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触れ合えないこんな夜には

うっかりカビだのキノコだの生やしそうな長雨の季節はまだまだ続きそうだ。
窓の外に降り続く雨に何度目かのため息をついた。
どうせやる事がないからと久しぶりにカメラの整備をしよう、そう思って道具を棚からカメラを取り出す。
ファインダーの埃を飛ばし、レンズや液晶を磨いて、本体も軽くぬぐえば少しは綺麗になった。他のレンズもちゃんと磨いてきれいに整理すれば本体は大丈夫だろう。
あとはカメラデータの整理でもしよう。
日常使いのノートPCとカメラを繋いでみれば、写っていたのはすべて個人的な日常の写真だ。
試合や練習時の風景写真用のSDではなく日常用のものを刺しっぱなしにしてたんだろう。
シーズン終了のときにみんなで食事した時の写真だとか、新ユニお披露目の時に浮かれて撮った写真だとか、駅前に応援横断幕を張ってもらった時の奴とか、そんな結構日常的なものが多い。
「あ」
これは去年あたり、二人で出かけた時のものだ。
確かあの時は少し遠出をしようと二人で大磯のほうまで行ったのだった。
モノトーンでまとめられた服に帆布の青いカバンを下げて、ただ海を見ている写真だった。
こうして見ると美しい人なのだ、という事を思い出す。ちょっと話し方に癖があるだけで。
その時撮った写真はみんなブラックラムズさんが被写体のものばかりだ。
(……もう、しばらく会えてないな)
画面越しに会う事はあるけれど、長雨と外出自粛の余波で逢いに行くのが少々おっくうになっているのが事実だった。
「どうしよ、」

こんなの見てたらよけいに逢いたくなっちゃったじゃないか。


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イーグルスとブラックラムズ。いちゃついて欲しい。

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