日本全国に冷たい風が吹き始め、秋雨前線が元気に活動し始めるころ。
「・・・・・・秋だな」
「秋ですねぇ」
茨城がにわかに活気付く、栗の季節が訪れる。
栗の季節ですね普段は地味だ地味だと評される茨城県も栗の季節ともなれば、メディアの注目がにわかに出てくる。
それが日本一の栗の里ゆえのプライドというものだ。
「そういや水戸主催の紅葉狩りっていつだ」
「来週の日曜日ですよ、あなたが車出すんでしょう?」
不審車両とよく見間違えられる黒のワンボックスカーは秋の太陽の下、桜川と筑西・下館の3人にきれいに磨かれている。
やけに綺麗になった自分ちの車と、ただの洗車だというのにハイテンションのちびっ子二人とそれを諌めるヤンキーにため息をつく。
「下館が下館に見えねぇわ」
「あれでいて意外にしっかりした子ですからね、そうでなきゃ合併後も中心としているのは大変でしょう」
結城はもらい物の紅茶に手を伸ばし、栗かのこをつまんだ。
秋雨の降り止んだ秋の昼下がり。
怖いくらいに平和で、騒ぐ子供もいとおしい。
「「秋だなぁ(ですねぇ)・・・・・」」
シンクロした言葉はどうにも年寄りくさかった。