ずっと、僕の世界は僕を中心に巡ってきた。
なのに一人だけ、僕とは違う場所にいる人がいる。
「で、直江津にガン無視されてうちに来たと」
「そう!酷くない?!」
「……んな事言っても直江津の事よく知らないから何とも言えねーんだけど」
君津は突っ張った見た目をしている割にこういう風に僕の話を聞いてくれるんだから意外と優しいと思う。
なんせ生粋の民間企業たるうち(住金)とは違って、官営である八幡や釜石がいるからいろいろ厳しかったんだろうと推測する。
「直江津は、自然現象以外で思い通りにならない唯一のものだよ」
ぶすくれてチョコを食べつつ僕がつぶやく。
あの灰色の瞳がじっと僕を覗くたびに欲しいなあと思うのだ。
僕や和歌山や君津の物とは違う、銀にも似た灰色の瞳が。
「恋してるみたいだな」
「……こい?」
「魚のじゃねーぞ?」
「いやそれくらいは分かるけどさ。でも、恋なの?」
「俺がそう思っただけだよ」
君津と鹿島と時々直江津