「ケーキ買ってきました」
突然、東京まで来たから迎えに来るようにと指定されたのは上野駅の改札口。
そこまで迎えに来て渡されたのは二つの箱に入ったケーキ、どちらも茨城の有名店のものだ。
「……また、なんでだよ」
「いてもたってもいられなかったんですよ、帰りを待つのも億劫でしたから」
一日適当に観光して回って帰ります、と水戸が告げる。
何故水戸がそんな行動をしたのかの見当はついていた。
「全線復旧って言ったって、まだ何年も先の話だぞ」
「それでもです」
常磐線の全線復旧のめどが立ったとはいえど本当に動き出すのは何年も先の話だ。
予定がまた一つ増えたとある意味酷くドライに考えていたのは、取り戻すべき日常がもう一度帰ってくる喜びを爆発されるには今はいささか多忙すぎたのだ。
「あなたの二度目の誕生日ですからね」
「だからケーキ二つか」
「ええ」
どこまでも、どこまでも歩いていく。
そうして帰ってくる場所は、この目の前にいる兄貴分の前でありますように。
常磐線全線再開決定記念