突然ですが、水戸が部屋から出てきません。
「で、呼び出されたと」
「そう言う事。水戸、生きてる?」
ドア越しにノックをしながら声をかける。
「……生きてる」
「なら良いけど、仕事に来ないって色んな人が心配してたよ」
「だって、寒いんだもん」
「冬用コート着て車で行けばいいでしょ、車なら出すから」
「その冬用コートの場所分かんない!」
「探しとく」
「あとマフラーと手袋も!」
「それも出す」
「あと朝ごはんも!」
「コンビニ寄ればいいでしょ」
「……そこまで言うなら」
渋々水戸が了承する。
棚の奥から冬用コートとマフラーと手袋を引っ張り出して、のろのろと部屋から出てきた水戸に押し付ける。
そしてそのまま車に乗せて、後は県庁に向かうだけだ。
「こんなに寒いのなんて、おかしいよ……」
水戸のつぶやきはその通りだけど、だから部屋から出ないのは別だろうと言う言葉は抑えておいた。