「おっ、精が出とるなあ」
「……レッドハリケーンズ」
俺の顔を見た瞬間にあからさまに表情が悪いものに変化する。
新たな拠点への引っ越しのために積み上げられた段ボール箱の山の中で、NTTコミュニケーションズシャイニングアークスはあからさまに不機嫌であった。
「うちの親父(NTTドコモ)から引っ越しうどんと、東のじーさま(NTT東日本)からの引っ越し蕎麦と西のじー様(NTT西日本)からのタオル持ってきた。他にも色々あるけど量多いからお前んとこのスタッフさんに預けたわ」
「どうも、というか降格したんだから再昇格のための練習してろよ」
「親父の付き添いで東京来たついでに新しいグラウンド見てやろうかと思ってな、そしたらまーみんなついでに渡しといてくれっていろいろ押し付けてきてなあ。可哀想やから一緒に持ってくわーってコムさん(NTTコミュニケーション)が一緒に来てくれたわ」
「……うちの父さんやおじいさまに迷惑かけてないよな?」
ジトっとした目でこちらを睨みつけてくるがもうそれも慣れた。
まあ好きだの嫌いだのどうでもいいのだ。本来の目的はほとんど果たした。
「ないない、じー様怒らせるほど俺アホやないもん」
「ならいい」
「グラウンドも少し見たら帰るわ、俺もグラウンドもう一面欲しいわあ」
「欲しけりゃ実績上げて引っ越し費用作って貰え」
「はいはい」
段ボールだらけの部屋を出て真新しいクラブハウスの中をふらりと歩く。
うちのクラブハウスは綺麗だと自負しているが、さすが完成してひと月も経ってない新居と比べられると負けてしまう。
あー、俺も総天然芝グラウンドもう一面欲しいなー!
特にオチはないNTTダービー