「なんか今日は規律が駄目だったねえ」
スピアーズがひとりそんなことを呟くと、グリーンロケッツが「本当だよねえ」と困ったように呟いた。
管を巻くならいつもの3人で、と思ってテレビ通話を繋げてみたけれどやっぱり規律の話になってしまうのはやむなしだ。
「ディーロックス、今日仙台まで見に行ってたんでしょ?現地組としてはちょっと悲しかったんじゃない?」
「せっかく来たんなら勝ち試合が見たかったですけどね、地のもの食べて気晴らししたんですけどやっぱりねえ?」
「頑張りは認めるけど消化不良感は否めないよねえ」
スピアーズは冷やしトマトを齧りながらビールで流し込んでから、ハーッとため息をついてから口を開く。
「やっぱり試合のほとんどの時間をひとり少ない状態で過ごしてたのが一番の敗因だよね」
「そこ抜きにしてもジョージアのフィジカルの強さはすごかったけどねえ」
グリーンロケッツはお気に入りのお店のテイクアウト惣菜をつまみにハイボールを飲んでいる。
ちなみに僕は三角油揚げと牛タンで日本酒を味わいながら店の個室で1人飲み中である。
「フィジカル強いのは昔から言われてる事じゃん」
「あとジョージア、前よりスピード出るようになってません?」
「なってるかも。あんな走れるチームだったっけ?ってぐらい早かったよね」
「フィジカルあって走れる人はうちにも欲しいよねえ」
「スピアーズがスカウト視線でものを言い出した……」
「代表戦も大事だけど俺らはチームだもの、チームを強くすることも考えなくちゃじゃん?」
「強い選手がいるチームが強い訳じゃないけどね」
グリーンロケッツが自虐めいたつぶやきをこぼしてきたので、相当酔いが回ってきたのかなあなどと思う。
「スピアーズって今日チームイベントだったんですっけ」
「そうだよー!だからどうしてもそういうこと考えちゃってさ、代表戦と選手や俺の強化は別物だよなあって。あ、ちなみにこのトマトもイベントの直売コーナーで買ったんだよ」
チームイベントに何故野菜の直売コーナーがあるんだというツッコミは置いておく。
「プロップ満員電車とかインタビュー企画もウケたけど、あの場にいた人が代表戦絶対見てるとは限らないんじゃないかなあとか思っちゃってさ」
「告知してましたね……部屋をプロップしかいない満員電車に見立てて脱出する企画でしたっけ?」
「だいたいそんな感じー、今度みんなで飲むときにやる?」
「暑苦しそうなんでいいです」
ぐだぐだと喋りながら飲んでいれば、遠方まで行って酷い負け試合を見た悔しさも少しは晴れていく気がした。
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Dロックスとスピアーズとグリーンロケッツ。
今日の試合ほんとさぁ……という気持ちがプロップ満員電車の写真で全部吹き飛んでいった。