『結局サンウルフズっていいチームだったよな』
サンゴリアスが何杯目かのジンソーダを空にしてそんなことをつぶやく。
オンラインで酒を酌み交わしながらの飲み会は、試合から3時間もするとログアウトや寝落ちですっかり落ち着いていた。
『ホンマ、愛されとる感じしたもんな』
スティーラーズ先輩がほろ酔い気味にそう呟きながらつぶやいた。
『活動休止から2年も過ぎれば人間忘れとるもんなのに、客席が写ると一人二人必ずあのグッツを持ってる客がおって……あんな風に大事にされてるってええよな』
『だとしても今回は特例に近い復活だろう』
その声で寝落ちしていたはずのブラックラムズさんが起きてきていることに気づいた。
『ブラックラムズ起きとったん?』
『先程転寝から起きたところだ、斯様に愛されていても戻れない者は戻れぬ。スティーラーズが一番良く知って居る事だろう』
『……せやけどな。けどあれはあれで俺らの一つの理想やと思わん?非業の死を迎えようとも愛され、その名を記憶にとどめ続ける存在ってのは』
『死なないに越したことはないけどね』
サンゴリアスがぽつりとつぶやいて『俺も色々考えなきゃなあ』と上を見上げた。
新しいリーグでどのようにふるまうか、競技のプロ化という流れの中で自らはどこに生きる道を見出すか、考えることはいくらでもある。
「まだ焦る事じゃないよ、サンゴリアス」
貰い物の檸檬堂を開けながら俺の失ったものが頭の隅に浮かんでは消えていく
数々の失ったものや手放さざるを得なかったものたちのことを、忘れたことは一度たりともない。そうさせた人への恨みも、またしかり。
「俺たちが死すれどもラグビーは死なないんだから」
『死ぬ前提で物を言うなや』
間髪をおかずにスティーラーズ先輩がツッコミを入れてくる。
『汝は一度死んだ心算で居るのだろうが、我らは死人と話せる力を得た事は無いぞ』
『……そうだよ、お前に死なれたら俺が退屈で困る』
三人からのそれぞれの言葉は優しい。
『それにまたなんかの折にフラッと復活してくれるだろ』
サンゴリアスは前向きに笑いながら新しく開けた缶ビールを見せてきた。
『信じようぜ、次の未来を』
「お前がそう言うならそうする」
画面越しに小さな乾杯をするとスティーラーズ先輩が『バッファロー(※)』とつぶやいた。
※:ラグビー界の儀礼で右手で酒を飲んではいけないので気づいたらバッファローと言って指摘し、言われたら持ってる酒を一気に飲み干すというルールがある
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ワイルドナイツとサンゴリアスとブラックラムズとスティーラーズ。
サンウルフズまたひょっこり復活してほしいですね。