*真壁と岩瀬と笠間のおはなし。
*昨日(6月第一日曜日)はプロポーズの日なんだよ。
二人で生きて行くのだ、という言葉を聞いた時に思ったのは消失の2文字だった。
「だから、子供はよろしく」
「・・・・・ああ」
合併し、名前を失うと消えてゆく。
それは俺たち―市町村という概念及びそれらに類似する存在―の宿命だった。
けっこんしようよ笠間・真壁・岩瀬という組み合わせがごく当たり前のようになったのはいつの頃だったかは忘れてしまった。
気がつけば3人だったし、それに抵抗感はなかった。
友人と呼ぶべきか幼馴染と呼ぶべきかは俺には分からないが、ずっと一緒だった。
微妙な関係性の中で、俺は真壁に惹かれ真壁は岩瀬に惹かれ岩瀬は真壁に惹かれた。
どこか無意識の中で岩瀬に叶わないのだと認識した時、俺は結ばれてもない赤い糸を離した。
そして、かの『平成の大合併』の流れは岩瀬にも一つの結論を与えた。
『俺、真壁と一緒になるわ』
* *
「かさまにぃ?」
「・・・・・桜川か」
太陽が地面を照らし、人々のざわめきが辺りを包む。
(陶炎祭で寝てどうするんだよ・・・・・)
辺りを見回して、思わずため息をつくと結城が口を挟む。
「やっと起きたんですね」
「悪ぃ、気づいたら寝てた」
「まあ今回は延期するかしないかの瀬戸際だったんでしょう?」
仕方ないでしょう、と結城がため息をつくと震災の影響を感じさせない活気が酷く心地よい。
「桜川」
「はい?」
「お前の両親の夢を見た」
桜川は両方の血を平等に受け継いでいた。
そう思うと何故か愛おしく思えて、少しだけ頭を撫でた。
全然明るくねぇ・・・・・。唖然としてます、私が。
笠間の恋はバッドエンドですけど、その続きである下笠がフラグクラッシャーなので私が泣いてます。