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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

あなたは背負い込みすぎていたから

押上駅
「本線、いる?」
「・・・・・・・お前生きてたんだ」
「当たり前でしょ、相変わらずの汚い群馬訛りね」
「余計なお世話だ元本線めが」

***

今から70年近く前のこと。
京成の終点は押上駅で東武の終点は業平橋(現とうきょうスカイツリー)だった。
浅草・上野方面への延伸申請を何度も続けながら、紛れもなく焦っていた。
それは傍目からでも分かるほどの苛立ちと焦りだった。
『煮詰まりすぎだろお前は、ちっとは休んどけ』
『延伸できたあんたには関係ない、これであんたは弟ちゃんと養えるってとこなんでしょ』
『はあ?何言ってんのお前、おれそんなこと一言も言ってねぇぞ、日光は関係ねぇし』
『うるさい』
完全に八つ当たりだった。
もともとそんなに仲が悪いわけでもなかったが(行き先が違うし競合もしてないし)この辺の時からすでに関係悪化の燐片を見せていた。
初めて会った時からすぐに煮詰まるタイプだとは思っていたが、ここまではっきりとどやされると腹が立つ。
『・・・・・・・絶対に浅草に行ってやる』
執念のような京成の一言をわざと聞こえない振りをした。
その少し後のことだ。
当時電化が進んでいた総武線に負けぬように、東武に先を越されぬようにと焦った京成の贈賄が発覚する。
のちに京成電車疑獄事件と呼ばれたこの事件はそれ相応の反響があった。
『京成、贈賄なんかしてたのか』
『上がしてたんだよ、あたしは無関係。』
『そうか』
『・・・・・・・あたしも耄碌したね、上の動きひとつ確認できちゃいないんだ。腹立たしいぐらいだよ』
その翌年、旧本線は姿を消した。
新しい京成本線と金町線が押上駅で『旧本線が消えた』と、そういったのだ。
『路線は消滅してないのにか』
『失踪みたいなものじゃないかと』
『あくまでも個人意見だけどね☆』
『お前が新しい本線とゆう点に同業者としてある意味不安感すら感じるんだけんど』
『にゃははー、ねーちゃんは気にしてなかったのになー』
『でも東武さん、ずっとこの子の存在は謎だったんですよ』
『なにが』
『この子達は二人で一本の京成本線だったんです、どちらかがいずれ本社と本線の役割となってどちらかが消えるのだと。二人の境目が分かっていなかったんですよ。
だけれどこれでようやくはっきりしたような気がしているんです。』
『・・・・・そうかね』
その後浅草延伸許可を貰うものの地域からの反対によって挫折、京成電車が浅草へ車ではそれから30年後のことだ。

***

「死んでたとお思いで?」
「そういうもんだと思ってた」
「あほ、今でもあたしは京成押上線だよ」
指3本の強烈なでこピンを食らわされる。
ああくそ腹立つ上から目線だ。
「ここのこと全部押し付けてるのにか」
「あの子が本線だからね、いまのあたしは引退したご隠居だよ。」
「仕事押し付けすぎだろ」
「問題ないよ」
相変わらず腹立つ上から目線ではあるが、昔とどこか違う気がしてぼんやりと考えてみる。
「お前、昔より思いつめたところがなくなったな」
「背負い込みすぎてたからねぇ」
あっけらかんと笑い飛ばすと、こいつの本性はこうだったのかと気づいていつの間か二人で笑っていた。






おわり

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