きょう、エイプリルフールは素直になれない女神様が告白するために作られた日だという説がある。
だから今見ている光景は、きっと嘘なんだ。
「ただいま」
「・・・・・筑波?」
和傘にはかまとブーツというはいからさんのような服装で、彼女は俺の元へ帰ってきた。
君が帰ってきた日「どうしてここに?」
「記憶をあの子に返してからあの子の体の一部を用いてここにいられる様になったのよ、きょうはあの子もお休みだから」
「そうなんだ」
あの子、つくばエキスプレスの名前を挙げてふふふと笑う。
「海を見に行きたいんだけれど、いいかしら」
「・・・・・もちろん!」
* *
千葉を南に下って内房に行ってみると、菜の花の匂いがした。
「潮の匂いより菜の花の匂いの方が強いね」
「春らしくて私は好きよ」
砂浜の上でそっと手を繋いで、海を見ていた。
規則的に響く潮の音と菜の花と潮の匂いしか周りにはなかった。
「ねぇ」
「ん?」
「・・・・・・あなたと同じくらいあなたも東武さんも好きになれなくてごめんなさい」
その言葉はあまりにも今更な言葉だった。
筑波が精神的には誰かのものにならない事ぐらい知っていた。
「今さらだにゃぁ」
「そうよね、でも一度謝っておくべきだと思ったから、きょうの12時の鐘がなる前に」
「・・・・・シンデレラみたいに12時の魔法でもかかってるの?」
「そういうとこかしら」
「じゃあ、嘘をついてみて。今日がエイプリルフールな事ぐらい、知ってるでしょ?」
空を見上げて彼女は少し考えると、
「だいっ嫌い」
「・・・・・・シンプルな嘘」
「だってそれしか思い浮かばなかったから」
やっぱり嘘でも悲しいのかなどと思いながら、愛されてるのだとも言い聞かせて空をもう一度見た。
京成さんと筑波さん。
二人の好きが違うことで傷つけていたと思っている筑波さんの話でした。