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コーギーとお昼寝

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夜雨の博多にて

「本降りですネ……」
窓の外を見て呟いた後輩の一言で、小雨だった雨が本降りになっていたことに気付いた。
「こげん雨やとうちば戻るんも面倒っちゃ」
「2人とも泊って行けばいいですヨ」
「いや、俺はいいよ。後輩の家に泊めてもらうのは性に合わないし折りたたみ傘あるから」
鞄から引っぱり出した折り畳み傘を見せてやると、二人の後輩はそれでもというように泊るようせがんでくる。
軽く酒が入ってることもありぐずぐず言う後輩たちに「この話は終わり」と宣言すると、ちょっとだけ納得いかない顔をしつつもそこまで言うのならばと送り出してもらえた。
本降りの夜は思ったよりも冷え込んでいて、酔いがどんどん抜けていく。
「……サヤ?」
「香椎さん、いや、今はキューデンヴォルテクスでしたっけ」
「どっちでもいいよ」
黒髪の下から覗く紺と橙の混ざり合った瞳は、自分にとって最初の後輩のものだった。
サヤこと新日鉄住金八幡ラグビー部は、この雨に降られたらしく全身ずぶ濡れで濡れネズミと呼ぶに相応しい有様だった。
思わず鞄に入れていたタオルを差し出すと黙って受け取ってきた。
「博多にいるなんて珍しいな」
「八幡さんの代理です」
北九州を代表する彼の親会社(正確には製鐵所か)の名前を挙げると納得してしまう。
俺たちは親会社が無ければ生きてゆけない。彼らに金銭的に支えられることでこの命脈を保っている。だから俺たちは彼らの仕事を手伝うのが日常となっている。
「これから帰りって時に雨に降られたってところか」
「まあ、そんなとこです」
「傘貸してやろうか?」
「別に平気です、雨が止むまで待つぐらい」
「駄目だ、この調子じゃ一晩中降ってもおかしくない」
「人間じゃあるまいし一晩ここで過ごしても風邪は引きませんよ」
いつからか彼の発言はひどく暗くなった。
ブルーマーズの暗さはまだ自虐の範疇なのだが、サヤのは聞いていてどこか痛々しく響くのだ。
「八幡さんが泣くぞ」
「あの人は私のためには泣きませんよ」
「しゃあしいぞサヤ、黙って駅まで送らせろ」
傘を押し付けてから鞄に入れてあった防水の上着を羽織ってその手を掴む。
どれだけひどい雨が降ろうとも、雨具ぐらいならいくらだって貸してやれるのだから。







キューデンさんと八幡さんとこの子。
ちなみにサヤという呼び名は練習拠点の鞘ヶ谷から貰いました。そのまま。

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君津くんと廃プラスチックリサイクル

君津は意外とごみの分別にうるさい。
「ったく、もう少しちゃんと分別しろよな……」
「いやあついめんどくさくて」
半分キレ気味ではあるけど鹿嶋市のクリーンカレンダーを確認しながらごみを分別してくれるから、見た目のわりに君津は根っこのところは面倒見がいいなと思う。だから堺に変な粘着されてるんだろうけどね。
「だいたい、ペットボトルは回り回ってうちで燃料になるんだからちゃんと分けろよな……」
「そう言えば毎年君津のところで加工した廃プラが来てるもんねえ」
「毎年1万トンそっちに送ってるんだけどな……」
「コークス炉の燃料送ってくれてありがとうね?タールやガスも俺たちが正しく機能するのに大切な副産品だしね」
「分かってるならもう少し分別に気を遣おうな……?」
「あはは、ごめんごめん。そういうのって人ににまかせっきりだから覚えられなくてさ」
「もう慣れたけどな、とりあえず燃えるゴミは明日回収日みたいだし今すぐに出して来い」
そう言って君津が燃えるゴミの袋を押し付けてくる。
まあゴミ出しぐらいはしないと駄目だよねえなんてのんきに考えてしまう。
「あ、そうだ。ゴミ出し終わったら冷蔵庫に入れてあるアイス食べようよ。此花からアイス屋さんに置いてあるようなおっきいアイス3つも貰ったんだよね」
「アイスクリームディッシャーこの家になかったと思うんだけど」
「でぃっしゃーってなに?」
「……もういい。後で買いに行くぞ」





君津と鹿島。廃プラスチックの話をして欲しかっただけ

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ねこと休日

半分猫屋敷のようになっている日立の家は冷暖房がしっかりしている。
理由は単純で、夏涼しく冬温かい環境にしないと猫の身体が耐えられないからである。
「……重いよ」
昼寝から目が覚めると、猫たちがわらわらと日立の傍にいた。
胸元のいいところ(?)に陣取る日製に顔の真横に陣取っているJX、そしてありとあらゆる隙間を黒い毛玉たちが多い尽くしている。
「いや、少し冷房が効きすぎてる気がして暖を取っていた」
「温度下げればいいのに」
「別にいいだろう」
確かに悪い気分ではないが、手のひらや足先に至るまで猫まみれというのは正直重い。
しかし日製はそう悪い気分でもないらしく満足げである。
(……まあ、いいか)
冷房の温度は猫たちが目覚めてからでいい。




日製猫と日立さん。
もふもふネタが書きたくなったので。

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或る師弟

「おや師匠、こんなところで珍しい」
本来この国にはないはずの赤と青の入り混じった青年の視線がこちらに飛んできて、思わず顔をしかめる。
「……あなたの師匠と呼ばれると寒気がしますね、浦項(ぽはん)」
「師匠は師匠ですから」
さらりと言い切ったその台詞には怒りすら沸いてくる。
恩知らずのクソガキの手元には付き合いの深い日本一を奪って行った自動車メーカーの封筒。
(分かっていても、殺意しか湧いて来ませんね)
ある時期、国の求めのままに釜石や京浜と韓国で仕事をしていた時期があった。
その時に育てたのがこの目の前の青年であるのだけれど、彼は私たちの誰にも似ることなく育った。
京浜が言うには目や耳のかたちが八幡に少し似ていると言っていたけれど、そんなもん似てたまるかという思いの方が先に出る。
まだらになった赤と青の瞳は不自然さを感じさせるが、この青年が生まれた時からずっとこういう色であったことを私は知っている。ああ憎たらしいったらありゃしない。
「どうぞ、風邪など召されないよう気を付けて」
「あなたは一生肺炎で苦しんで死んで欲しいですけどね」
「嫌だなあ、僕は死にませんよ。韓国鉄鋼業は僕と妹にかかってるんですから」

****

「君津サンのごはん久しぶりですネ!」
大盛りのカツカレーを目の前ににこにこと笑う南国青年……もとい、ミナスジェイラス製鉄所は素晴らしくいい笑顔であった。
技術研修という名目で2年ぶりの来日を果たした(というか適当に言い訳つけては2~3年に1度は地球の真裏から遊びに来ている気がしてならないぞ?)弟子の事は、まあ、可愛いと思ってはいる。
「ええっと、イタダキマス!」
片言の日本語でそう返してくる弟子に「Vamos lá, mastigar(めしあがれ)」と呆れ気味に返す。
今日はあまり腹も減っていないからと選んだ卵サンドとコーヒーをもさもさと口に運ぶ。
(……弟がいたらこういう気持ちなんかな)
俺たちは人間じゃないから、そういう気持ちをちゃんと理解している訳じゃない。
でも「Delicioso!(美味しい!)」と叫びながら飯を食うミナスジェイラスを、可愛いと思うのはきっと普遍的な感情なんだろう。





浦項と八幡の死ぬほど仲悪い師弟と、ミナスジェイラスと君津のげろかわ師弟。

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夜雨は僕らをダメにする

90年代の和歌山×直江津。



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