37度0分。
緩慢な動きで確認した体温は微熱のようだった。
メールで職員に確認を入れてみると、どうも空調設備の不具合が出たとかで仕事への支障は出ないが不具合の出た範囲が広いので修理には丸一日かかりそうだという。
身体が重くて、もう何もする気になれない。
(……葺合がそばにいてくれたら良かったのに)
そう思いながらそっと目を閉じた。
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「……みや、西宮」
私を呼ぶ声がしてゆっくりと目を開けると、尼崎がいた。
此花と同じ瞳の色をした彼はひどく心配そうだ。
「あまがさき?」
「そうだよ、尼崎だよ。此花が『西宮に電話入れてるのに繋がらないから様子見に行け』って言われたの」
「ああ……余計な心配かけてごめんなさい」
「体調悪い?」
「設備が調子悪いみたいで、どうもその余波が私の方に来てるみたい」
「そっか。千葉くんとか水島ちゃんとか電話入れたら?」
「向こうは向こうで忙しいから……明日には体調も戻ってるだろうし」
それは本心だった。
千葉も水島もうちの大切な主力なのだから、すぐに治る程度の不良で余計な心配をかけさせてもしょうがない。
「西宮って、そういうトコは似てるよね」
「……誰に?」
「葺合さんに。ほら、あの人も人に弱み絶対見せないぞって感じだったからさ」
「頑固さは川鉄の伝統なのかしらね」
「そうかもね、俺今日は暇だし葺合や此花の代わりぐらいにはなるよ」
「大丈夫よ」
尼崎の声掛けで、少し気が楽になった。
「本当にどうしようもなくなったら電話するから」
「うん」
西宮と尼崎。実は隣人な二人のはなし。