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コーギーとお昼寝

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なんにもないはなし

何となく気が晴れないときというものはあるものだが、今日はもうだめかもしれんなあと思う。
ブルースにでも電話してみようかと思ったけれどあいつは今忙しいのでやめておく。
スティーラーズのおっちゃんでもええけどこういう話が一番嫌いな人やしな、シャイニングアークス?あれは論外。
こういう時は出来ればあんまり遠くない、近くにいる人がええな。
「……ライナーズのじいちゃんならいけっかな」
スマホを弄って電話を繋いでみると『レッドハリケーンズ、腹減っとるん?』と聞いてくる。
俺が小さかった時からの付き合いやしそこまで気ぃ使わんでええ人ではある。
「腹は減ってへんわ」
『そら残念、今日結構ええ感じのキーマカレー出来たんやけどなあ』
電話越しになんかミキサーの音がして、料理してるんだろうなあというのが伝わる。
こういう音ってなんか聞いてて不思議と心地ええよな。
「何キーマ?」
『肉は鶏と牛半々、野菜は人参・玉ねぎ・ピーマン・たけのこの水煮』
「たけのこの水煮?!」
『これが歯ごたえ面白くなってええねん、あとパプリカとかも入れてある』
「ピーマンとパプリカほぼ同じやん」
特に何もない他愛もない話が耳と心に心地よい。
しばらくダラダラと話していると少し眠くなってきて「そろそろ寝るわあ」と言って電話を切る。
スマホは充電器に繋いでそのまま布団にもぐりこんで静かに深呼吸。
明日どれだけ辛い宣告を受けようとも、まだ俺は大丈夫だから。

*****

レッドハリケーンズの他愛もない電話が切れて、「何やったんやろうなあ」とつぶやいてみる。
だいたい誰かが俺宛に用事もなくいきなり電話寄こしてくるときはろくなことが無い。
スマホのニュース通知を見ると【NTT、ラグビーチーム再編へ】の見出し。
「これかあ」
レッドハリケーンズ心の裡のもやはこれだったらしい。
俺と話して少しでも晴れたんならそれでいいだろう。
「にしても最近こういうの多くて嫌んなるな」
仲間が減るのは寂しい。けれどそれを仕方ないと諦めてしまう、そんな自分もいる。
長く生きてるうちに多少感情が摩耗したんかなあという気もするけれど俺にはよぉわからん。
まだ暖かい焼きカレーパンをかじりながら俺の裡には何があるのだろうと思ってしまう、そんな日曜の夜である。




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レッドハリケーンズとライナーズ

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君といつまでも

設営準備をこなしながらマスク越しに鼻歌を歌う。
きょうは俺たちの愛すべき男の100試合出場の記念日で、それを祝う商品を並べるのが妙に楽しくて仕方ない。
「なんで加山〇三?」
「そういう気分だからだよ、ぼんやりしてないで自分とこのチームテントの整備したら?」
「一通り終わって落ち着いちゃったからね」
グリーンロケッツが飄々と言い返すので「暇人め」なんて言ってみる。
「掃除でもしといてよ、俺たちのリーチの記念日なんだから」
「……ブレイブルーパスってホントにあの人の事好きなんだねえ」
「当然でしょ」
ずっと俺のところにいていい日も悪い日もそばにいてくれた。
桜のジャージをまとって先頭に立つあの姿に多くのラガーマンが心を震わせ、日本ラグビーを支えてくれた。
そんな特別な男の100キャップを俺が祝わずだれが祝うというんだか。
「チームマンの特別さぐらいわかってるでしょ」
「まあねえ」
「グリーンロケッツも記念Tシャツ買ってきなよ」
「一枚ぐらいなら良いけど財布と相談かなあ」
そんな風に苦笑いをしながらグリーンロケッツが言う。
まあ買わなくても別にいいけどね。色んな人に買って欲しいし。
腕時計を見てるとそろそろお客さんが来始める頃合いだと気づく。
「そろそろチームテントに戻れば?」
「ほんとだ、じゃあ今日はよろしくね」
そう言ってグリーンロケッツが手を振って自分のチームテントに戻る。
自分のテントの仕上がりを確認すると見本として展示していた記念シャツについた埃に気づく。

(どうかあなたがいつまでも俺たちのラグビーの一員でありますように)

そんな祈りを込めながら俺はシャツに印刷された顔を撫でるように埃を取った。


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ブレイブルーパスとグリーンロケッツ

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決戦は秩父宮で

「今日という日とかけましてドリカムと解く、その心は何だと思う?」
試合前の設営を終えて一服していた俺にスピアーズが面白半分にそう聞いてきた。
「何その急な謎とき」
「答えは『決戦は金曜日』」
その答えで「なるほど」と思わず納得してしまう。
3月11日という日付でどうしても東北を連想してしまうが、そもそも俺たちはこれから試合なのだ。
リーグ首位と二位の直接対決。しかも金曜夜の秩父宮。
「確かに『決戦は金曜日』だわ」
「でしょー?」
去年の日本選手権でスティーラーズを倒し実力をつけてきたスピアーズにとっては日本選手権制覇への試金石ともいえるこの試合は、まさに決戦。
「まあ勝つのは俺だけどね」
秩父宮三連戦の二戦目、うちには先週の勝利の勢いが残っているしやれるはず。
「うちの選手たちのヤバさを思う存分味わって勝ち点貰ってくね」
「はいはい」
こういう話が出来るのも平和ゆえ。
平和で楽しい決戦の夜を思う存分味わおう。



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サンゴリアスとスピアーズ

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ドキドキ、もふもふ、マスコット

*今回は短編集です

・広島ダービーの場合
「マスコット総選挙?」
「もしかして聞いてなかったんですか!?」
レッドレグリオンズが驚き気味にそんなことを言う。
ようやくマスコット投票の結果が出たばかりなのにそんな流れになっていたなんて聞いておらず、思わず表情が悩み気味に曇った。
「マーズ兄さ、じゃないかスカ兄さんだいぶSNS不精だから……まあ僕の言えた義理じゃないですけど」
僕もたまたま人から聞いて知ったぐらいだから兄さんが知らないというのも無理はない。
「せっかく決まったわけですし人気出るといいですよね、あのヒバゴン!」
「そうだけどな、でもまさか本当にヒバゴンがマスコットになるとは思わんかった……」
僕も名前が決まった時見た目がライオンに寄せられたし、マスコットの決定で見た目がマスコットに寄っていくことが時々ある。
つまり兄さんも見た目がヒバゴンに寄せられる可能性は十分ある。
「どんな見た目になっても僕は兄さんが大好きですよ」
マスコット決定でどうなるのかは分からないけど強く生きて欲しい。

・ダイナボアーズとイーグルスの場合
マスコット総選挙に向けてダイボくんの動画を撮っては編集している。
オレいのししだし~と口ずさ見ながら動画を一つTwitterにあげると、そこそこ反応も来る。
するとすぐにLINEが来たので見ると、送り主はイーグルスだった。
『ダイボくんバク転できてないじゃないですか』
『これからできるようになるさ』
そういえばイーグルスもマスコット総選挙に浮き立っているようで、さっそくTwitterを動かしている。
『カノンちゃんもアクティブに動かしても良いんじゃないか?』
『それもいいですね、検討しときます』

・ブルーシャークスの場合
「まさかマスコットの名前が決まってすぐにこんなイベントが行われるなんてねえ」
そのあまりのタイミングの良さに感謝しつつササッと清き一票を求めるツイートしておく。
鮫太朗と名付けられたうちのマスコットは結構評判もいいし、きっといいとこまで行きそうだなあ。
ついでに他の参加マスコットを確認しておく。
「……あれ、ウォーターガッシュってマスコットいたんだ?」
堅物というか結構真面目なウォーターガッシュの所にも最近マスコットが出来ていたらしい。
今度試合するときはマスコットも一緒に描いてツイッターにあげとこ、なんて思いながらその姿をスクショするのだった。

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ラグリパによるマスコット総選挙、どうなるのか楽しみですね

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きみとのラグビーを愉しむ

暗いニュースが並ぶ新聞を折りたたんでふらりと朝の散歩に出る。
未だ肌寒い冬の風が吹いているが日差しは暖かく、天気予報だと今日は初春の陽気だという。
雨の試合もあれはあれでいいがやはりやるなら晴れているほうが良い。ボールも滑らないし。
熊谷の街へ出ると試合前の興奮が早くも街角から滲みだしてお祭りの様相を見せている。
「……こういう点において府中はまだまだだよなあ」
府中だと先輩や他競技のチームもいるから遠慮してしまってここまで出来ないのだ。
しかし仮にもラグビーの街を名乗っているわけなので本当はこれぐらいやっちゃってもいいのだろう。
そうしてフラフラと散歩していると熊谷のスタジアムに辿り着いていて、ワイルドナイツやスタッフさんがさっそく動き出していた。
「おはよう」
「サンゴリアス、今日は早いね」
「散歩してたら足がこっちに向いたんだよ、俺も手伝おうか?」
「じゃあ骨組み運ぶ出すの手伝ってよ、トラックの横に積んであるから」
「了解」
トラックから荷下ろしされたばかりのテントの骨組みを肩に担ぐとワイルドナイツに指示された通りの場所に担ぐ。
こういう試合前の準備の雰囲気も好きだ。
「サンゴリアスこういうの早いよね、さすがゴリラ」
「……ゴリラって言うなよ」
ベースになった生き物がゴリラなので間違ってはないけど、ゴリラって言われるときだいたいからかいの意味を含むことが多いのであんまり好きじゃない。
「素直な感想だよ。組み立てはスタッフさんに任せて、芝の様子見に行く?」
「おっ、行く行く!」
という訳でワイルドナイツに先導されてまだ無人のスタジアムへと入っていく。
選手たちが通る通路を歩きながら熊谷のスタジアムはいつ来ても広々とした感じがしていいな、と思う。
味スタもそうだけれどやっぱり新しいスタジアムには心惹かれるものがある。
「おっ」
外に出て一番に目に入ったのは朝露をまとった芝がきらきらと輝く姿だった。
もちろんこの冬にあっても青々と育った芝も美しい。
「綺麗なもんだな、青々してて枯れてるのや剥げかけてるのが見当たらない」
「こういうの見るとグラウンドキーパーさんには頭が上がらないよね」
二人ぼっちで美しい緑の上に立っているとワクワクしてくる。
この後最高に楽しいゲームがこの場所で待っているんだと思うと、気分の高揚が止まらなくなる。
「やっぱりワイルドナイツは最高のライバルだわ、俺のためにいい街もいい芝も用意してくれて」
「お前のためじゃなくて最高のラグビーのためだよ」
「それは言えてる」
「さて、芝の生育状況もいいみたいだしもうちょい手伝って貰おうか?」
ワイルドナイツが悪い笑みをこぼしながら俺を捕まえようとするので、反射的に俺は逃げ出していく。
最高に楽しい試合に設営は必要だけど、俺は選手たちに今日の芝が最高なことを伝えたい。
「あっ、こら!」
「やる事思い出したから!」
俺たちの試合を『令和の天王山』と呼ぶ人もいる。
けれど中身はただのラグビーバカたちの最高に楽しいゲームだって、心底思う。
どんなに暗い世界に堕ちようとも俺たちはただのラグビーバカなので。


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サンゴリアスとワイルドナイツ。
日テレの中継もある(関東のみ)ので余裕がある人はぜひ見てください。

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