「ここから海って見えんの?」
シャトルズがつまらなさそうにそう呟いた。
地図で見れば海からほど近いこのスタジアムだが海とは方向が微妙にずれており、川は見えるが海が見えない。
「スタジアムからは見えないな」
「駅前も海全然見えないじゃんね。
せっかくおうじょうこいて海の近くに来たでな、海見たかったじゃんね」
地図で見ると駅の中心部もスタジアムも海が近いので海が見えるイメージがあったのだろう。
シャトルズの住む刈谷は愛知の内陸のほうだったはずだし、気持ちはわかる。
「少し行けば見えるところがあるぞ。行くか?」
「行こまいか」
これは確か『行こうよ』という意味だったな。名古屋の製鉄所さんに教わった記憶がある。
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スタジアムを駅とは反対方向に進んでいくと坂道になる。
坂道のてっぺんにたどり着くと水門があり、上が通れるようになっているのだ。
「海や……」
「今目前にあるのが大槌湾、あれが大槌のひょうたん島だな」
海辺に育った身としては冬の海に余り感動はないが、みんな不思議と海が好きらしい。
もちろん海が嫌いなわけではないしあの日のことには自分なりに折り合いもつけてる。
(ま、喜んでくれるんならええか)
「海もええが、反対側もいいぞ」
晩冬の日をきらめかせた鵜住居川の向こう側に大きく翼を広げたようにスタジアムが立つ。
あれが自分の誇りなのだ。
「……いいスタジアムじゃんね、海も川も山も全部あって駅も近い」
シャトルズからふっとこぼれた言葉と笑みに返すことは一つ。
「そりゃあここは自慢のうちだからな!」
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シーウェイブスとシャトルズ。
はじめてうのスタ行ってきましたがやっぱ空が広くていいですね。