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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

土佐は春のなか

「高知ってもっとあったかいイメージだったのにな……」
思ったよりも肌寒い空気に思わずため息が漏れる。
グラウンド整備を手伝ってくれた学生さんに挨拶を済ませ、カメラの準備をしていると「何ばしよると?」という声がする。
聞き覚えのある福岡訛りの主はブルースくんだ。
「キャンプテンズランの中継準備を」
「試合じゃ無うて?」
「ええ、試合中継はアプリでやりますけどねそれとは別に」
「変わった事ばしよるな」
ブルース君がぼそっとそんなことを言う。
「グリーンロケッツに比べればマシですよ」
「あん人も変わった事しよるけど……」
「あ、そこにある延長コードこっちに伸ばしてもらえます?」
ブルース君は何となく腑に落ちないという顔をしつつ、延長コードをこちらへと伸ばして渡してくれる。
「ちなみにブルースくんは何してるんです?」
「試合前にグラウンドをくまなく見るのがおいの習慣なもんで」
「君も大概変わってる気がします」
「そげん事はない、って思うとるんですけどね……」
首を傾げつつも再び彼はグラウンドの様子を見て回る作業に戻っていく。
陽が高くなるにつれ、肌寒かった風が少しづつ温まっていく。
南国土佐の春の日に開幕のホイッスルが鳴るまであとすこし。


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シャイニングアークスとブルース。

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秋田と縁がない話

『今回は本当に申し訳ありませんでした』
電話で詫びを入れてきたレッドドルフィンズさんに「いいんですよ」と僕は緩く答える。
『いえ、感染者が出なければ中止にはなりませんでしたし……』
「第四波の話も出てきましたしね、集団感染を防ぐことが一番ですから」
『いや、まあそうなんですけど……早くワクチン受けられればなあ』
「そうですね、次こそちゃんと試合しましょうね。失礼します」
電話を切ると目の前にの段ボールにようやく手を付けられる。
(レッドドルフィンズさんには悪いけど、正直詫びの電話よりこっちのほうが重要なんだよな)
秋田での試合は去年も予定にあったが見事に中止となり、先日のブラックラムズ先輩とのやり取りもあって無性に秋田名物が恋しくなってしまった。
その勢いのままに注文した秋田名物・稲庭うどんに比内地鶏ステーキがちょうど電話の直前に届いたのだ。
うどんはお湯で3分ゆでて、うどんつゆは水に入れて解凍。比内地鶏は袋ごとレンジでチンするだけ。
指示通り手早く作れば美味しいにおいが立ち込める。

「……来年は現地で食べたいなぁ」

二年連続で立ち消えとなった秋田での試合。
来年こそは絶対秋田で試合をしたいと、心底思いながら比内地鶏を噛みしめるのだった。

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イーグルスのはなし

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丸の内コズミック

東京駅を出てすぐに広がる丸の内。
企業のオフィスが立ち並ぶ整然とした街並みは、整いすぎて嫌になるときがある。
「さっむ……」
久しぶりの東京がこんなに寒いとは思わず、小さく背中が震える。
薄手のコートを持ってくるべきだったと後悔してももう遅い。行きがけに温かいコーヒーでも買っていこうかと考えていると「八幡?」と声をかけられる。
「釜石、久しぶりですね」
「久しぶりの本社集合だからな」
コートなしで春ものの布で仕立てた着物に身を包んだ釜石はあまり寒く感じないようだった。
室蘭もそうだが北国育ちの釜石はわりあい寒さに強いほうなのであまり気にならないようだった。
「寒いのか」
「風が思ったより冷たくて」
「ほれ、懐炉使っていいぞ」
そう告げると懐から使い捨て懐炉が出てきて、こちらに手渡される。
「すいません」
「いいさ、新幹線の中じゃ暑くて持て余してたくらいだ」
初春の東京は寒の戻りなのか冷たく乾いた風がビルの隙間をびゅうびゅうと通り抜けていく。
まだ富士製鉄と八幡製鉄だったころは、冷たい風に吹かれながら二人で御幸通りを歩きながら途中で必ず別れることになった。
丸の内のまっすぐな道は遠くまで見渡すことが出来て、釜石が歩いていく背中をずっと見ていると冷たいビル風が体の芯までしみるのだ。
「にしても丸の内も変わったよなあ、買い物できる店がずいぶん増えたろう」
「温泉も出来ましたしね」
今はこうして並んで本社まで行くことが出来る。
どれだけ話していても道がまっすぐなので迷子になることが無い。
「まあ、一番変わったのは私があなたと一緒にこうやって通勤できるようになったことですけど」
「そうだな」


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オチのない八幡釜石

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7年ぶりに勝ちの味

「そういえば事務機ダービーで僕が勝つのって結構久しぶりですよね」
イーグルスは久しぶりの勝利への感涙をタオルで拭いながら此方に問う。
「七年ぶりになるか、随分汝も成長したな」
「速度はともかく成長しないものはないですから、これで安心して秋田遠征出来るなー!」
そう言いながらイーグルスは心地よい春の風を胸いっぱいに吸い込み、晴れやかな面持ちで空を見上げる。
正直に言えば今日の試合は最後のミスが響いてしまったように思う、しかしそれを誘い込むだけの地力を得たというのは正しく成長である。
「少々血の気が荒くも見えたがな、何度か揉めていただろう」
「あー、まあ、そうですね」
「何か心当たりが在るのか?」
僅かな躊躇いの後、周囲の目を確認して小さな耳打ちをする。

「……ここだけの話ですけど、今日うちの親が会長と一緒に来てたんですよね。勝ったら特別勝利給出すって言われてたんでそれでヒートアップしやすかったのかも」

そこまでこの試合に思い入れがあったのかと言う感想の前に、イーグルスは唇に人差し指を当てて他言無用を知らせてくる。
個人としての我らは付き合いの長い先輩後輩であるので話しても良いと判断したのだろう。
しかし内容が選手の士気に係わる事だ、我が必要以上に人の話す事を嫌がったのだろう。
「イーグルス、「はい?!」
「秋田土産は稲庭うどんを頼むぞ、我は稲庭うどんを食べた事が無くてな。ついでにいい酒を一本」
口止め料の意味も含め手土産を頼むと後輩は「……先輩のお望みのままに」とほほ笑んだ。


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ブラックラムズとイーグルス。
事務機ダービー楽しかったなー!

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俺の太陽が消えたとしても

2010年、5月だというのに肌寒い雨の日に届いた夕刊のことを今もよく覚えている。
-三洋の白物家電事業、パナソニックへ統合-
それは事実上三洋電機の消失を意味していた。
生みの父と育ての母を繋いでいたその名前の消失は、俺の心の柔らかな部分に深く突き刺さった。
「ワイルドナイツ?」
気付くと辿り着いていたサンゴリアスのもとで、俺はこう頼んだ。
「おれをころしてくれ」
「は?」

「三洋電機のまま俺を殺してくれ」

サンゴリアスの手で殺されることが、俺の願いだった。
パナソニックに殺されるぐらいならば最後のライバルに息の根を止められたい。
ラグビー場の芝生と汗のにおいの中で死ぬことのみが望みだった。
「馬鹿か」「は?」
「人間だって親は先に死ぬのに、なんでお前は親と一緒に死のうとするんだよ」
「親が死んだら俺たちは残れないだろ」
「クラブチーム化すればいいだけのことじゃん、実際それでシーウェイブスさんとか元気に走り回ってるし」
確かにその人の名前を出されてしまうと否定できない。
21世紀の終わりとともに父親とともに消え去る可能性があった彼が、地域の人々の情熱によって生き延びて今も芝の上に生きて居る。
「それに優勝してお前が生き延びれば、三洋電機の名前が残せるだろ」
サンゴリアスはからりとしていた。
初夏の風のように湿り気のない言葉が俺の心を軽くした。
「それに、ここからは俺のエゴだけど」
「なに」
「お前がいないと日本ラグビーはつまんなくなると思うんだよな」
「……じゃあ、今日死ぬのはやめる」
「うん」
「死ぬのはお前の全勝優勝記録を越えて、シーウェイブスの最多優勝記録を越えて、世界に自分の名前を忘れられなくするまでにするよ」




それはあの地震から半月ほどの、健やかなほどよく晴れた日だった。
目が覚めると昨日まで赤かった髪の毛の一部が青く染まっていた。
それは三洋電機の消滅を示す痕跡であった。
明るい春の朝日の中で死んだ家族を思って泣きながら、それでも生きていくことを小さく母に詫びて過ごした。

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ワイルドナイツの昔の話。
ガ〇アの夜明けが三洋電機だったから……

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