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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

似たり寄ったり

日が暮れて肌寒くなったスタジアムにはもう一部のスタッフしかおらず、撤収作業が始まっている。
「シャイニングアークス」
「はい?」
「今日はありがとうございました、よかったらどうぞ」
差し出された豚汁と箸を受け取ればほんのりとちょうどいい暖かさと味噌汁の香りが心を和ませる。
これは冷たくなる前に食べてしまうのが礼儀だろう。
「いただきます」
ずっと口を付けた味噌汁からは馴染みのある優しい味がする。
「……正直今日の試合内容のせいであなたの事ちょっと嫌いになりそうなんですが」
「えっ」
「だって、本当ならトライになってたものを何度邪魔されたことか」
グラウンディング(※トライの際にボールを地面につける行為、これをしないと得点が認められない)を幾度となく阻止されたし逆転勝利は立ち消えになるし、なかなかやっていてキーッ!と歯噛みしたくなるような試合だった。
「それはそうですが……」
「けれども全力でぶつかってきてくれた証拠でもありますしね、この豚汁に免じて許します」
ダイナボアーズは納得いくようないかないような、不服そうな表情をしながら「はあ」と呟いた。
「次は勝ち点を倍返しにしていただいていきますから」
「いえ、次はちゃんと勝ち点を頂いていきます」
ごちそうさまでしたと豚汁の容器を返すと片付けも終わりだ。

「次は私のホームでお会いしましょうね」




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シャイニングアークスとダイナボアーズ

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青天を衝きたい

「最近釜石が大河の長文感想私に送ってくるんですよね」
八幡さんがため息をつきながら釜石さんから届いたという長文感想メールを私に見せてきた。
今年の大河の主人公と言えば多くの企業たちに影響をもたらした人物であり、元々大河が好きだという釜石さんがワクワクしながら見てるのも分かる気がする。
「長文ですね」
「ただ問題はここなんですよね」
そう言って指さしたのは3話で水戸藩が大砲を幕府に献上したシーンについての感想だった。
「『高任さんの大砲をもっと深堀りしてほしかった』……?どういうことですか」
「釜石、水戸藩が裏主人公って聞いてから『高任さんと那珂湊反射炉が出るかもしれん!』ってずっとワクワクしてたんですけどさらっと流されちゃったんで落ち込んでるみたいなんですよ」
水戸藩が現在の茨城県ひたちなか市に作った那珂湊反射炉は釜石さんの生みの親である大島高任の建造した反射炉である。
この反射炉づくりと水戸藩による大砲鋳造が橋野高炉や釜石製鉄所へつながっていくので、いわば水戸藩の大砲は釜石さんの兄弟分のようなものなのだ。
「それは無理筋では?」
「私もそう思ったんですけどね。ほんと、どう返事しますかねえ」
ため息をつきながら朝茶を口に含む八幡さんにふと思い立って口を開く。
「でも私と小倉さんなら出る可能性ありますしそっちで我慢してもらう、と言うのはどうですか?」
「関わってましたっけ?」
「ええ、渋沢さんはうちの創立に関わってますし小倉さんのお兄さんのとこは取締役会長でしたし」
「それで釜石の気が晴れるといいんですけどね」
そう言いながら釜石さんへのメールの返事を書き始める八幡さんの目は、どこか遠くを見てるのだった。


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戸畑と八幡。青天を衝け毎週見てますか。

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イーハトーブのもてなしを

「掃除はこれでよし、と」
グラウンドから枯れ草や鹿の落とし物(なんせ市街地を鹿が歩き回る土地柄なので)を回収し、袋の口を結ぶ。
ボランティアによるスタジアム整備ももうそろそろ終盤だ。
「……シーウェーブス」
「ああ、ダイナボアーズか。まだテント組むには早いんじゃないか?」
「天気や風を見たくて来たんだが」
「今日は大丈夫じゃろ、海風もゆるい方じゃし天気の急変もなさそうだからな」
うのスタは海が近いのでどうしても海風の影響を受けやすいし、芝も時々鹿に喰われたりする。収容人数も決して多くない小規模なスタジアムだ。
「いつもシーウェーブスのもてなしには感服するものを感じていたが、今回は直接関わり合いのないトップリーグの試合だと言うのに本当によくしてくれて助かっているんだ」
「うのスタで試合する奴はどこの誰でもみんなもてなすのがわしらの流儀なもんでな」
10年前のあの日、ラグビーが結んだ関係に救われて助けられた身の上だ。
ラグビーという縁でこの土地に来た人がここを素敵だと思って帰って行くことは本望なのだ。
「そうだ。今日の試合見にいくからな。チケットもとってある」

「……勝って帰ろう」

ダイナボアーズのその目に闘志の火がカチリと灯るのが見えて、ああ今日はいい試合になるなと確信した。

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シーウェイブスとダイナボアーズ

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ラグビーの友を探しつつ

「あーこの空気久しぶりー!」
うんと背伸びをしながら久しぶりに感じる甲州の風を思い切り肺に取り込んでいく。
メインホームである東京とはまた違うこの街の空気を浴びながらやる1シーズンに一度の試合は、俺のささやかな楽しみでもある。
「サンゴリアスさん」
「あ、お疲れ様。先に準備しといてくれて助かった」
昨日のうちに甲府入りしていたブルースが準備しておいてくれたグラウンドやテントの様子を確認すると、頭が下がる思いだ。
「今日は天気も持ちそうやけんみんな安心してやれそうで良かったっち思います」
「うん、そうだな」
ブルースが天気予報アプリと空の様子を見比べてそうつぶやく気持ちもわかる。
雨でも試合はあるけれど降らないに越したことはないのだ。
「あ、そうだ。今日ワイン持ってきてあるんだけど要る?」
行きがけに寄った道の駅で購入した甲州ワインの瓶を数本と、酒のつまみに購入した乾き物類をいくつか鞄から持ち出す。
「……先輩からの気持ちはありがたかことばい、だけんど今日はグラウンドで給水の手伝いがあるけん飲むんは遠慮しときます」
「ならしょうがないか、ワイン持ってく?」
「ええ」
赤と白を一本づつブルースにプレゼントしてやると、薄く笑う。
「ワインと一緒に勝ち点ば貰うて帰りますけん、今日は楽しみに」
「おっ、言うようになったな!」


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サンゴリアスとブルース。ときどき甲府で試合してるのを見ると結構アレ楽しんでるのかなあと思う。

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愛をこめて花束を

通勤途中に花屋の軒先に並ぶ早春の花を見て、あの人に渡そうと思った。
突然風に攫われたように亡くなってしまったあの人は開幕戦の惜敗をどんな想いで見ていたのか、聞いてみたくなった。
ブーケを買った俺はスタッフさんに連絡だけして、あの人に会いに行く。
春の匂いがするブーケを揺らしてあの人が眠る場所へ向かう。
府中から一時間弱、慣れない道はスマホに教えてもらいながら辿り着いたそこにあの人が眠ってる。
「ユハさん、花束買ったんだ」
墓石にそう語りかけながら買ったブーケをそっと花瓶に生けておく。
どうかなと語りかけても返事はない。
「ねえ、ユハさん。この間の試合の時さ、喪章つけてたんだけど気づいた?あれね、ユハさんのために作ったんだ。俺も手伝ったんだよ」
ああだこうだと語りかけて見ると、ああ本当に俺は大切な人を亡くしたなあって思う。
「ユハさん、俺みたいに長く生きてても死に別れってほんっとに慣れないもんなんだよ」
特に風に攫われたみたいにいなくなった人はね。
俺には何もできないけれどさ、春を告げる花束を持ってきた。


「ね、ユハさん。もう春だよ」


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ブレイブルーパスさんの早春の話。
タイトルはあの曲から。

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