「掃除はこれでよし、と」
グラウンドから枯れ草や鹿の落とし物(なんせ市街地を鹿が歩き回る土地柄なので)を回収し、袋の口を結ぶ。
ボランティアによるスタジアム整備ももうそろそろ終盤だ。
「……シーウェーブス」
「ああ、ダイナボアーズか。まだテント組むには早いんじゃないか?」
「天気や風を見たくて来たんだが」
「今日は大丈夫じゃろ、海風もゆるい方じゃし天気の急変もなさそうだからな」
うのスタは海が近いのでどうしても海風の影響を受けやすいし、芝も時々鹿に喰われたりする。収容人数も決して多くない小規模なスタジアムだ。
「いつもシーウェーブスのもてなしには感服するものを感じていたが、今回は直接関わり合いのないトップリーグの試合だと言うのに本当によくしてくれて助かっているんだ」
「うのスタで試合する奴はどこの誰でもみんなもてなすのがわしらの流儀なもんでな」
10年前のあの日、ラグビーが結んだ関係に救われて助けられた身の上だ。
ラグビーという縁でこの土地に来た人がここを素敵だと思って帰って行くことは本望なのだ。
「そうだ。今日の試合見にいくからな。チケットもとってある」
「……勝って帰ろう」
ダイナボアーズのその目に闘志の火がカチリと灯るのが見えて、ああ今日はいい試合になるなと確信した。
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シーウェイブスとダイナボアーズ