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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

やり切った後は祝杯を

「……なんかもうやり切った感すごすぎて動きたくない」
花園の芝生の上に寝転がり、暗い夏の夜空を眺める。
遠くには優勝したスティーラーズさん達のファンによる祝福の声。
「おう、お疲れさん」
「疲れさせたのそっちじゃないですかぁ、俺完敗だし」
俺がそう言うとせやなあとゆるく笑って俺に手を伸ばす。
「でもいい勉強にはなったやろ?主力抜きでも強いチームが一番強い、ってな」
「ほんとですよねえ」
その手を掴んで立ち上がるとまだスタジアムは勝利の余韻が淡く香っている。
負けた俺としてはチャレンジして潔く負けた妙な清々しさのみがあり、健闘を称えたい気持ちでいられる。
そこが同じ船橋の友人から闘争心が薄いと評されるゆえんなのかもしれないけれど、最後の最後まで得点させてもらえないと謎の達成感しかないのだ。
「明日帰るんやろ?」
「あ、はい」
「ならアフターマッチファンクションのあと、俺のおすすめの串カツ屋あんねん。奢ったるからそこ行こ」
「じゃー……ゴチになります」
俺がニッと笑えばスティーラーズさんもにっと笑う。
何時だってそうだ、全力の試合の後に飲む酒が、一番うまい。


スピアーズとスティーラーズ。
スティーラーズカップ戦優勝おめでとう!

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星を捨つる

注意書き

このお話は軽い暴行と出血があるのでお気を付けください


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東京ドームで乾杯を

室蘭との待ち合わせ場所は東京の入り口で、ストロング缶のビールを飲みながらふうっと小さくため息を吐いた。
こっちはただでさえいい気分とは言い難いのに室蘭が遅れてくるのは余計気分が悪い。
バックレてしまおうかとすら思いながら空になったアルミ缶を足で潰そうと地面に置くと「広畑じゃん!」と声を上げた。
「水島」
「いやーごめんねー?5年ぶりの出場でうちがボコボコにしちゃってー」
ほろ酔い気味の水島の言葉が妙に癪に障るのでうちわでぺしぺしと頭を叩く。
「……まったく謝罪の色が見えないんだけど、あと5年ぶりじゃなくて8年ぶり。福山は?」
「選手たちの方に行っちゃった」
「ふうん」
柱に寄り掛かる水島が私もお酒ちょうだいというので渋々一本ビールを分けてやると「ありがと」と返してくる。
「200円ね」
「有料なの?」
「それぐらいはとる」
「じゃあ返す」
ビニール袋に押し込むようにビールを返すかわりに、無断でコーラを引っぱり出してそのまま栓を開ける。
コラという暇もなくぐびぐびと一気飲みして「はー!」と気持ちよさそうな声を上げた。
「コーラ代は?」
「んー……じゃあうちのブースで配ってたタオルあげる」
袋に入ったままの新品のタオルにはでかでかとJFEの文字があり、他社のタオルを受け取るのもどうかと思ったがあって困るものでもないし自宅用に使えばいいかと諦めて受け取った。
応援グッツの詰まったカバンに適当に押し込むと遠くから「おーい」と声がした。
室蘭は大きめのリュックを背負いながらバタバタと駆け込んできた。
「ごめんドームシティで迷子になってた!」
「あ、室蘭だ!相変わらずいい美少年ショタコンホイホイで……」
「水島も元気そうだね~野球部の調子いいの?」
「うん、野球部が調子よすぎて福山ちゃんが野球の事しか話さないんだよね~」
「まあそういう事もあるよ」
はははっと笑ってごまかすと「俺も飲み物欲しい」というのでビニール袋を渡すと、レモンチューハイの缶を選んで取り出した。
「お酒いいの?」
「バレなきゃいいの~」
室蘭は見た目こそ子供だが実年齢はとうの昔に100歳を超えていることを水島は忘れてるのだろうか。
「水島!お待たせ!」
遠くから福山が駆け寄ってくる。
ぺたんこの靴に野球のユニフォームと応援グッツの入ったカバン福山は本気の応援モードという風体で、ユニフォームのところどころにはサインが入っているのも見える。
「福山お帰りー!」
「待たせてごめんねーみんなと話すと楽しすぎて遅れちゃって~……あ、広畑さんと室蘭さんもお疲れ様です!」
完全についでではあったが福山に軽く頭を下げられると、ひさしぶりと俺と室蘭も鷹揚に返した。
「室蘭さんこれから試合ですか?」
「うん、福山と水島も楽しんだでしょう?」
「はい!今日はすごくいい試合で!一回には先制出来まし「福山ビール飲む?」
試合のことを口走らせないためにビールを押し付けると福山はハッとした顔をして「……いただきます」と受け取った。
「せっかくだし乾杯してから別れる?」
「乾杯?」
「どこにですか?

「この素晴らしき社会人野球の季節に!」

室蘭が持っていたお酒を掲げると、俺たちは小さく缶を当てた。
「じゃあ、次は仕事でかな」
「そうですね」
それじゃあと水島と福山が腕を組んで帰っていくと「さーて、俺たちも行こっか」と室蘭が呟いた。




広畑と水島福山と室蘭。
今日の社会人野球がちょうどこの4人の集まる日程だったので。

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転がる石も丸くなる

梅雨に入ってから随分と日本列島は冷え込むようになり、この夏は冷夏になるという。
そんな冷夏のさなか、製造業界でちょっとしたパーティーが催されることになりそこに呼ばれることになった(本当は和歌山が行くべきなのだがめんどくさがって丸投げしてきたのだ)ので、急いで着物を引っぱり出して新幹線に飛び乗った。
待ち合わせは東京駅の新幹線ホーム。八幡が車を手配してくれたから傘は要らない。
紫陽花の着物に薄手のストールも巻いた私に八幡は「馬子にも衣裳ですねえ」と呟いた。
「なにが馬子にも衣裳だ」
ぶつくさ言いながら小走りでタクシーの方を目指す。
「だってそれ、京友禅でしょう?あなたに友禅なんてイメージないじゃないですか」
「住友御三家としてこれぐらい普通だよ」
八幡とて着ているもののは決して悪くはない。内輪のパーティーに合わせてブラックスーツだ。
「……住友事件の時は散々ひどい目にあわされましたけどね」
「あれは日向の大旦那が正しいと今でも思ってるよ」
「ミスターカルテルの娘ですねえ、協調哲学のきの字もない」
「そう言うのは和歌山の領分だからね」
ぱたぱたと小走りで歩きながらお互いの文句はいくらでも出てくる。
まったく、和歌山もなんでこいつと仲良くやれるのか不思議でならない。
「パーティーって何時だっけ」
「15時に目白ですよ、忘れたんですか」
「和歌山に丸投げされてきただけだからな」
「無茶苦茶ですよねあなたたち」
「和歌山が実務・対外があたしみたいなところあるからな。そっちだって実務は全部戸畑に丸投げだろうよ」
「実務もしてますよ」
「ほんとかよ」
ああだこうだ言っているうちに顔見知りの本社社員が手を振って誘導してくる。
タクシープールには風格ある社用車が扉を開けて待ってくれていて、そこに一緒に滑り込む。

「八幡さんと此花さんって喧嘩するほど仲がいい、の好例みたいな感じですよね。」

運転手を務める社員にそう言われるまであと5分。



此花と八幡。最近製鉄所組の更新をずっとサボってたので書きました。

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どこにもいかない君のために

ずっと部屋にこもったまま出てこない片割れに小さくため息を吐く。
この調子ではいい加減食事の一つも取らせようと買って来た弁当が冷めてしまう。
「開けたれ、ヴェルブリッツ」
「いまそれどころじゃないんだ」
扉越しに帰ってきた答えにふうっと小さくため息が漏れた。
弁当をいったん床に置いて、鍵の脇を思いきり足蹴りすれば部屋の鍵が壊れる音と一緒に何かが崩れる音がした。
それはここ数年のチームの活動記録や選手たちの勤怠記録、薬物依存にまつわる書籍や薬物事案の判例をまとめた書籍の山だった。
(……こいつ、全部確認してたんか)
ドアをぶち破ったときに崩れた書類の山に埋もれたヴェルブリッツはひどく憔悴したような顔をしてこちらを向いた。
「降格しても脚力は落ちないんだな」
皮肉めいた言い回しは無視した。
書類の山を書き分けて弁当とお茶を押し付ける。
「飯、食おまい」
「……そうだな」

***

書類の山を片付けて二人分の食事スペースを作り、お茶と弁当をゆっくりかみ砕く。
俺の降格が決まったときと同じように二人きりのしずかな食事だ。
あのときは確か酒を持ってきていたが、もうそれすら遠い記憶のように思えた。
いま、こいつの頭には色んなものが渦巻いている。
活動休止がいつ明けるのか、選手たちと監督への影響、司法がどんな結論を出すか、ファンや周囲への影響、お金のこと、これからの行く末のこと、とにかく数えきれないほどのことだ。
「飯が零れとる」
「……悪い」
「今は飯のことだけ考えりん」
何をどうしてやればいいのか分からないけれど、きっと俺に出来るのはここにいてやることだけだ。
今だけでもこのクソ真面目でどこかに逃げられない男のそばでただ一緒に弁当を食ってやろう。




シャトルズとヴェルブリッツ

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