*暇を持て余した短編集です
・マスクを縫う話(加古川+神戸)
要らないハンカチとガーゼでマスクを作ることにした。
このところ本社に行くことも無ければ、灘浜にこもりきりの姉さんやスティーラーズ君に会う事もない。
仕事はあれど需要低下で仕事量そのものが減ってしまって、あまりにも……そう、あまりにも退屈なのだ。
髪の毛用のゴム紐を結ってハンカチの穴に通せば姉さんに丁度いいサイズのマスクが仕上がった。
「……この調子でみんなの分作ろうかな」
次はスティーラーズ君、その次は真岡のぶんだ。
何かの役に立てばいいと思いながら次のハンカチを型紙と合わせるのだった。
・カレーを煮込む話(君津)
昨今はアホみたいに食材が安い。
給食用のものが市場に出回ってるせいか値崩れを心配するレベルで色んなものが安くなっている。
「だからってなんで俺は野菜ジュースで野菜を煮込んでるんだろうな?」
小松菜・セロリ・ニンジンの葉・キャベツ・ダイコン・アスパラ・林檎をすりつぶした汁に、櫛切りの新玉ねぎ・ニンジン・ジャガイモを放り込み、大きめに切った豚バラと牛すじを鍋に突っ込んで煮込む。
自分でももはや何を作ってるのかよく分からないがどういう訳か香りは美味そうなのが不思議だ。
あとはここにカレールーを入れて溶かすと、不思議なことに普通に美味そうなカレーになる。
カレールーは偉大だ。ついでに食材の大量消費にも貢献できてるから、きっとこれもいいことのはずである。あぶん。
・惰眠をむさぼる話(八幡)
こんなにのんびりできるのはいつ振りだっただろうかと思いをはせてみる。
ここ数年はずっとバタバタしていた気がするし、戸畑に仕事を移したこともあり随分と気楽だ。
(……駄目だ、眠い)
世間はソーシャルなんたらとかオーバーシュートだと騒がしいが、窓から注ぐのは春の日差し。
春眠暁を覚えずと言うし春と言うのはとにかく眠くなるものだと思う。
「おやすみなさい」
虚空にそう呟くと春の日差しは疲れた心と身体を心地よい眠りにいざなった。
・お取り寄せの話(千葉+水島)
サッカーの楽しみの一つに、遠征に行くことがある。
これは俺の周りのサッカーを見る奴が全員同意してくれたから自信がある。
「水島!こっち今お酒届いたよ!岡山の桃ワイン!」
『こっちも千葉のソーセージと酒届いてる』
水島お勧めの岡山の味を呑みながら、ダゾーンでサッカーを見る。
それぐらいさせて貰わないと暇すぎて死んでしまいそうなのだ。
「んじゃーどの試合見る?」
『ヨーロッパサッカー見たい』
「ん、分かった。キックオフと同時に乾杯ね」
『はいはい。福山見ないのー?』
画面の向こうから今ちょっと無理!なんて声が聞こえてくる。
「早くリアルで見れるようになんないかなあ」
そう呟きながら俺は名試合の始まりを待つのだ。