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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

サレンダーなんて出来やしない

*2005年ごろのいつかのお話

「シームレスパイプに特化する?」
「ええ、」
ブラックコーヒーに砂糖を溶かしながら和歌山がそう告げる。
「随分と賭けに出ましたねえ」
シームレスパイプ(継ぎ目なし鋼管)は主要用途である油田開発の停滞から売り上げが伸び悩んでいると聞いていたが、そのシームレスパイプの方にシフトするのは大きな賭けのように思た。
「中東も少しは落ち着きましたし、またそのうち油田開発も再開するでしょうから」
「……で、私を呼んだ理由は?」
「シームレスパイプへの特化で鋼板ラインを止めることになったんです……新日鉄は今鉄源が足りてないんですよね?」
顔は笑っていたがその目は妙に冷たく冴えたものだった。
瞳孔の淡い茶色はじっと私を見定めているように思え、腐っても此花の血筋だと思い知らされる。
「半製品の購入って訳ですか」
「そういう事です」
あなたなら買ってくれるはずだというその眼差しが嫌になる。
「……そこまでしてシームレスへの賭けが失敗したら死にますよ、あなたたち」
「その時はその時です、最悪鹿島や直江津を連れて新日鉄傘下に入るのも止む無しでしょうね」
自虐めいた口ぶりで和歌山がそんな言葉を漏らす。
コーヒーを勢いよく飲み干すと叩きつけるようにコップを机に置いた。

「僕は住友金属の代表権を持つ身ですから、これ以上赤字を垂れ流す役立たずと呼ばれる訳にはいかないんですよ」

その言葉には曇りのない本気故の強さが滲んでいた。
小さくため息が漏れたのはきっとその本気の風圧に負けたのだ。
「……話は通しておきますよ」
彼はもう賭けのテーブルについている。
損をしてでも止めるなんて、出来るわけがないのだ。

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【パラレル】今まで通りでいられない

小倉と和歌山が師弟の一線を超えそうで超えない感じのお話。
いちおうパラレルです。


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とり天、ハイボール、6月の昼下がり

その日、後輩は朝から台所に立っていた。
「人んちの台所朝から占領して何人分作る気だよ……」
「だって関東勢全員呼ぶって言ったのそっちでしょ」
サンゴリアスは鶏肉を一口サイズにカットしながらそんな事を言う。
いつもの4人と千葉から三人、群馬から一人、神奈川からも一人、総勢9人でしかも全員アホほど食うともなればそりゃあこんな大量にもなるかと納得してしまう。
言い出しっぺとはいえ少し呼び過ぎたかと思ったが、そもそもサンゴリアスが酒の肴も作るなんて言い出したのも大きい。
「あ、鶏もも切ってくださいよ」
包丁と鶏ももを押し付けられて仕方なくぶつ切りにしながら、思わず浮かび上がった疑問を口にする。
「……いいけどこれ何にすんの?」
「とり天とチキン南蛮ですねー」
「ああ、今日の試合会場大分だからか」
そう、今日みんなで集まるのはテレビ中継される試合を見るためだ。
日本対イタリア戦を見ながらああだこうだ話すだけの飲み会というよりもくだらない集まりに近い。
「鶏肉の残り全部同じくらいの大きさに切っといてくださいねー、ゆで卵ももういいかな」
「人使いの荒い後輩だな……」
お湯からゆで卵をざるで救い上げて冷ましたりどこかから出してきた粉を混ぜたりとまあバタバタ動くのに思わず呆れる。
「サンゴリアス、忙しそうだね」
「……なんだ野武士かぁ」
こそっと現れたのはワイルドナイツだった。どうやら一番乗りらしい。
「さすが『腹空かせて来い』っていうだけあるよね」
「ほんとにね」
「あ、鶏肉終ったんならゆで卵剥いて冷蔵庫にあるピクルス玉ねぎと一緒に大きめに刻んで玉ねぎだけ塩もみしといてください」
ざるに大盛りのゆで卵をポンと押し付けられて思わずため息が漏れる。
「手伝うよね?」
「……それ拒否権あ「無いよ」
やれやれというようにワイルドナイツがため息を吐くと、二人並んで茹で卵の殻を黙って剥くことにした。
「「「こんにちわー」」」
揃って現れたのはグリーンロケッツ、スピアーズ、シャイニングアークスの千葉トリオだ。
シャイニングアークスの手にはどこからか手に入れてきたらしい酒瓶ががらからと揺れている。
「スピアーズは手伝って、アークスはその手持ちの酒冷蔵庫に入れて部屋片づけ、グリロケは何もするなよ……」
「はいはい」
「待っていちおうこのミラクルセブンも電気屋の子よ?!信頼されてなくない?!」
「グリーンロケッツ……」
キッと睨みつけると諦めたように手伝いだしたスピアーズ、反射的にツッコミを入れ始めるグリーンロケッツとそれを憐れむように見てくるアークスという三者三様の状況が出てくるがそう言う奴だから仕方ない。
とりあえず酒だけ冷蔵庫に入れてもらい、アークスとグリーンロケッツがぶうぶう言いながら部屋を片付け始める。
「お邪魔します」
少しどすの効いた能様な低い声と共にやってきたのは馴染み深い相模原からの客人だ。
「お、ダイナボアーズ!久しぶり!」
「……なんで茹で卵剥いてるんですか」
「サンゴリアスに手伝わされてる、悪いけどアークスと一緒に片づけといて」
「手土産あるんで冷蔵庫借りますね」
「了解」
早速手土産を冷蔵庫に突っ込むと早速部屋を片付け始める。
ふいにピクルスをザクザクと刻んでいたワイルドナイツが俺の方を見て「ダイナボアーズと仲良かったんですか?」と聞いてくる。
「あいつとは三菱三井交流戦で面識あるんだよ、お硬いけどいい奴だよ」
なるほどと呟くと刻んだピクルスとゆで卵ををボウルに突っ込んで、玉ねぎも刻み始める。
「……汝ら早すぎるな」
「もっと早めに来ても良かったですかね?」
最後に到着したのはプロジェクターとそれ用の幕を持ったブラックラムズとイーグルスだ。
みんなで大画面で見るために自社製の最新プロジェクターを持ってきた二人に恨みはないが「映写機ダービーめ」と思わず漏れるのは仕方ない。
「あ、料理手伝いましょうか?」
「大丈夫だからブラックラムズ手伝いな」
「我は一人でよいぞ、映写機の事はアークスとグリーンロケッツに手伝わせる」
横からからりと揚がった揚げ物のいい匂いがしてきた。
どうやらとり天とチキン南蛮が上がり始めて来たらしい。
「ワイルドナイツ、全部刻み終わったんならマヨネーズと混ぜといて」
「はいはい」
そうして刻んだ野菜と一緒に大きなスプーンでザクザクと混ぜると美味しそうなタルタルソースが仕上がってきた。
そうして揚げたてのチキン南蛮の上にさっとお酢とみりんを混ぜたものがかけられる。
ついでにとり天も仕上がってきた。
「美味しそうなチキン南蛮ですねえ」
「イーグルス運んどいて」
「はい、」
「……タルタルソースはかけなくていいの?」
言われてみればせっかくタルタルソース作ったのにかけてないがいいのだろうか。
スピアーズの疑問に答えたのはイーグルスだった。
「宮崎だとタルタルなしのチキン南蛮もあるんですよ、だから別盛りにしたら好きにかけられるし別で良いんじゃないですか?うちの会社初代が大分の人なんでタルタルなしの奴を親に食べさせてもらったりしましたよ」
「へー」
「あと冷蔵庫にあるメイソンジャーサラダとぬかづけとりゅうきゅうも出しといて」
「サンゴリアスくんも料理人みたいですねえ」
「料理は気が抜けないからな」
イーグルスと一緒に配膳を手伝ってやれば、食卓が随分と華やかに彩られていく。
男だけの飲み会にしてはインスタ映えとでもいうのだろうか?絵面があまりに華やか過ぎるぐらいで笑ってしまう。
(うちの妹分が喜びそうだなあ)
大盛りのチキン南蛮ととり天、魚の醤油漬けのようなもの(大分のりゅうきゅうという料理らしい)、ガラス瓶に詰まったサラダが二つ、箸休めの漬物も随分カラフルな野菜が使われている。
「あとこの保冷瓶にはガスパチョ入れてあるそうです」
「……凝り性だね」
そして遠くからピーと複数の音が鳴り響いた。
これは自社製品の炊飯器の音だと気づくと、サンゴリアスが大きめの炊飯身を丸ごと二つ抱えて持ってきた。
「米炊いてあるんですけど要りますよね?」



「「「「「もちろん!!!!!!!!」」」」」」

きょうもがっつり食ってがっつり飲んで、大好きな仲間と大好きなラグビーの話をしよう。


日本対イタリア戦を見る関東組の話。

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初夏を愛せよ

しゃっしゃっとすきバサミが音を立てて赤い天然パーマを薄くしていく。
「マーズあにさん意外に器用ですよね」
「意外か?」
「はい」
「そりゃあ心外じゃのぅ、これでもうちは製造業じゃし」
マーズあにさんの手で軽くなった髪の毛が初夏の風にふわりと揺れた。
梅雨入り前の蒸し暑い昼下がりにはちょうどいい髪型になってきた。
「あにさん、」
「うん」
「……今年も、あにさんと試合するの楽しみです」
「おう」
ちゅっと小さな口づけを落とせば、夏の匂いがした。



いちゃいちゃする広島ダービーの話

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お風呂の話

「広い風呂っていいよなあ」
佐賀関がやけにリラックスした声色で俺の隣でお湯につかる。
ここはうち(大分製鉄所)の職員向けのお風呂なのだが、諸々あって今日は俺と佐賀関の貸し切りになっている。
「……人んちのお風呂でリラックスしすぎじゃない?」
「でかい風呂に罪はないんだよ」
仕事する男の武骨な手が俺を軽く撫でてきた。
微かに潮の匂いがするのは日がな一日中釣りばかりしてるからに違いない。
「大分、お前ホンット顔がやわらけーよなぁ」
「それ褒めてるの?」
「褒めてるよ」
佐賀関はいつも俺を可愛がってくれている。
八幡のビジネスライクな扱い(まあ八幡は釜石以外にはわりとドライだけど)や、光の兄扱いや釜石の孫扱いとはちょっと違う、近所の犬を可愛がるような感じが俺は不思議と嫌いじゃなかった。
「風呂出たらビール飲んで昼寝するか」
「仕事しなくていいの?」
「午前中したから良いんだよ、お前が仕事あるならうちで寝るけど」
「いいよ、俺も飲む」



大分と佐賀関。昼風呂からの昼酒とか言う堕落。

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