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コーギーとお昼寝

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世界の日差しが落ちる頃1

2017年10月10日の空は全く底なし沼のように広かった。
ああそう言えば今日は晴れの特異日だった、だから東京オリンピックが開幕して体育の日にになったのだっけ。
真新しいカラーテレビで見た東京の空の青さはあんなにも爽やかに見えたのに、今はその空の青さがまるで真っ暗な古井戸を覗き込むような不安感をかき立てた。
昨晩、震える声で告げられた言葉を思い出す。
『スティーラーズ、あなたは何ひとつ悪くないの』
親であり姉でもある彼女―神戸製鋼神戸製鉄所―があんな声を出すとは、思ってもいなかったのだ。
それが余計に恐ろしく思えたことなど本人は知る由もないだろう。
青い芝生の練習グラウンドの上で、楕円のボールの縫い目を指でなぞる。
ポケットから電話を取り出して電話をかける。
『おう、生きとるか?』
「勝手に殺すなや」
近鉄ライナーズのブラックジョークをキレ気味に返す。
大丈夫、いつも通り話せている。
『親子ともども死にかけとるみたいやからちょうどええやろ。で、何なん?』
「……別に」
『不安になったか』
その指摘があまりにも図星で言い返せずにいると、電話越しにため息が漏れた。
『今回の件でワールドファインティングブルの事思い出したんか?』
それもまた図星だった。
『東芝かてなんとかなったし、お前んとこは首相なり何なりに頭下げれば何とかなるやろ。でかい会社は潰すだけでも一苦労やもんな』
「親が無事でも、俺が無事んならん例もあるやろ」


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今宵は帰れない

窓の外の雪は夜になっても止む気配を見せず、思わず深いため息が漏れた。
県内各地の雪情報を見返すとどこもかしこも雪で立ち往生というひどい有様で、雪による死者の報告も出ていた。
「夜ご飯出来ましたよーっと」
「ありがとう、鯖江」
電子レンジのごはんに肉野菜炒めを乗せただけの簡素な食事ではあったが、こんな日は暖かいものが食べられるだけありがたい。
「にしてもこんなに雪降るの56豪雪以来なんでしたっけね」
「そうらしいわね、とにかく被害を最小限にってことで考えなくちゃ」
「うちの県庁所在地様はほんとにまじめで……ま、俺もいるんで仮眠とってきてくださいよ」
「鯖江が気にしなくても平気だから」
「気にするんですー」
そう言って寝袋を押し付けられると「食べ終わったら少し仮眠しておくわ」と伝えておいた。





福井と鯖江と大雪の話。

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ホワイトバレンタインは始まったばかり

ぴくぶらの「ピクブラバレンタイン2018」投稿作品
ほぼほぼBL


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記憶と現在

「シーウェイブス、ちょっといいか?」
ふらりと釜石さんがやってきて渡してきたのが一枚のメモだった。
「もしかしたらもう話を聞いたかもしれないが、新日鉄住金の全社大会に来てくれないかって」
「ああ……組み合わせ決まったんですか?」
「おう。鞘ヶ谷との交流試合だ」
「え」
思わず上ずったような声が漏れる。
鞘ヶ谷―新日鉄住金八幡ラグビー部―は、かつて自分が追いかけて来た背中そのものである。
今でこそ主戦場が異なるがやはりその名前は少しだけ特別な音として響いた。
「今年で鞘ヶ谷が90になるからそのお祝いも兼ねてのことらしい、お前さん昔あいつに憧れてたろう?」
「……60年代ラグビーを見てた側からすれば憧れない方が無理でしょう」
「まあお前さんの言い分は分からんでもないな、神戸も似たようなこと言ってたしな」
年季の入ったラグビーマニアの同業他社の名前を挙げてそう答える。
「楽しみか?」
自分の追い掛けた背中をついに追い越したときの感慨はよく覚えている。
生まれたてのまだ人の身も与えられていなかった自分にとってあの背中は特別だった。何よりも超えたい存在だった。
「初恋の人と会う心地がする」
「……さすがに初恋の人は言い過ぎじゃないか?」
「いえ、これ以外にいい言葉が出てこないんです」
九州の空はどんな色だろう。
数年ぶりに出会う彼らはどんな風になっただろう。
鞘ヶ谷、あなたはこの交流試合を楽しんでくれるだろうか?
かつて追い掛けていた人は今どんな風にこの世界を走るのだろう?
過去のあなたしか知らないと俺と、過去の俺しか知らないだろうあなたは今の俺とどういう風に戦ってくれるのか、こんなにもわくわくすることはない!






シーウェイブスと釜石。
全社大会交流戦、某サイトでネット中継されねえかな……

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秩父宮にも雪は降るので

ある意味絶景だが、ある意味では微妙な心地だ。
雪に埋もれる秩父宮のグラウンドに思わずため息が漏れる。
ポケットに突っ込んであった携帯をとれば『サンゴリアスさん?』と声がかかる。
「サンウルフズ?」
『そうですよ、そちらの雪はどうですか』
別府で合宿中の狼の耳を持つ少年の姿を思い出す。
やはり彼もこの秩父宮の様子が心配だったのだろう、まあ彼もこの秩父宮をホームとするのだから当然と言えば当然か。
「壮観なまでの雪」
『でしょうね、この調子であと何度降るのか……』
「スーパーラグビーの開幕戦前にまたもう一度降るんじゃないか?」
『開幕戦当日に降られたら最悪ですけどね』
「フランビーズなら喜びそうな気もするけどなあ」
『芝の状態がこれ以上悪化されたら困るって意味ですけど』
「ああ……それとそちらの様子は?」
『つつがなく進んでますけど?』
「そりゃあ良かった」
それじゃあ失礼しますと言って切られた電話に溜息を吐く。
当初こそ扱いかねていたあの子供も今ではずいぶん馴染んだものだと思う。
トップリーグが終わって梅の香りが漂えばスーパーラグビーの季節、そして夏が来れば再び俺たちの季節だ。
(スーパーラグビー開幕戦もどうなるかね?)
雪解け水と混ざった雪を踏みしめながらそっとその場を立ち去る。
もう少しすれば、春が来る。





サンゴリアスとサンウルフズ。

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