八幡釜石の短いお話。
・オートロックすら効果無し
「おはようございます」
枕元に当然のようにいた八幡がモーニング緑茶を差し出してきた。
確か昨日のうちに九州に帰したはずなのになぜここにいるんだこいつは。
「鍵、閉めといたはずなんじゃが」
「合鍵で入りました、と言うか合鍵の場所ポストの内側から鉢植えの下に移したんですね」
(……今度寮に生体認証でも導入してくれんかな)
・どうかわらっていてください(※過去話です)
「釜石がいてくれることが一番重要なんですよ?!」
八幡はそう呟いてコーヒーカップを置いた。
安もんで味が悪いと文句を垂れながらも出した分はちゃんと飲み干すこの男の妙な律義さは私には分かりかねるものだ。
「なのに廃止も検討とかふざけてますよねえ?」
「それを愚痴るためにわざわざ大阪に寄った訳?」
「別にいいでしょう、手土産持って来たんですから。あの人の笑わない世界に意味なんてないんですよ」
「……愛が重いな」
・はじまりの夜と朝に
ベッドの横に、八幡がいた。
綺麗な相貌を崩して口の端から涎まで垂れてるような始末に、思わず苦笑いがこぼれる。
(全く、馬鹿じゃけどかわいいよなあ)
やれやれという気分でベッドを抜け出して、脱ぎ散らかしたシャツを部屋の隅の鞄に押し込む。
早めに出ないと間に合わないのだから仕方ない。
「先に行ってるからな、」
軽く八幡の髪をかき上げてやればくすぐったそうに笑った。
こうしていつものきょうが始まる。
八幡釜石へのお題:オートロックすら効果無し/(どうかわらっていてください)/はじまりの夜と朝に
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