出光と昭和シェル、別に付き合ってないし別に擬人化である必要性もないような話。
スーパーのフルーツコーナーで、じっとカットスイカを眺める人がいた。
他のお客さんと比較して頭二つ分ぐらいとびぬけた欧米風の美女が、じっとスイカを眺めているのは少々異様な光景でもあった。
「シェル、」
声をかけてきた小柄な青年の方を向く。
「何に悩んでるんだ?」
「……スイカを買うか買わないか」
スイカは夏のイメージが強い割には一年中スーパーに置いてある。
同じ赤い果物でもイチゴは夏になると店頭から姿を消すが、スイカはしぶとく店の片隅に置かれたりなんかしているので不思議な果実だと彼女は思っていた。
「なら、買えばいい」
彼は買い物かごにカットスイカを入れて、さあ行こうという風に彼女の手を取る。
しかし彼女はこの季節外れのスイカを食べることが大切なのではない気がして購入に踏み切れなかったのだ。
「欲しいものは絶対に買う、それがうち(出光)だよ」
「ほんとうに?」
ぽつりと彼女が問いかける。
「本当に。大丈夫、ちゃんとシェルも正式にうちに連れ帰るから」
その言葉で何かがほどけた気がした。
「早く、私もテイクアウトしてね」
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早く連れ帰られたいシェルと、連れて帰りたい出光の話。