鹿島が言うには、夏は忍び寄るものだという。
心地よい春の日差しがだんだんと厳しさを増し、長袖では暑いくらいの気候になる。
それは忍び寄るというよりもダッシュで駆け寄ってくると呼ぶ方が正しい気がした。
「神栖、霊柩車が来るよ」
コンビニからの帰り道、突然鹿島がそんなことを言う。
「この辺りに葬儀場なんてないのに?」
「ほら、あそこ」
真っ黒の細長い車だ。
霊柩車というよりもリムジンに似ている気がしたけれど、鹿島には何が違うものでも見ているのだろうか。
その車は横断歩道に立つ僕らの前を通り過ぎ、走り去っていった。
「あれ、ただのリムジンじゃ?」
「気配で分からない?」
「……1千年以上生きてる自分と一緒にされても困る」
「そうかな?こう暑いと死んだ人間の気配が忍び寄ってくるから」
……忍び寄って来てるのは、夏じゃなくて幽霊じゃないか。
神栖と鹿島。