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コーギーとお昼寝

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白い恋

3月12日の朝になってふと思った事がある。
「スティーラーズにお返し、した方が良いよな?」
昨日、SNSにあげるつもりで撮影していた元選手のインタビュー動画の編集が終わっていない事が分かり急遽動画編集の得意なスティーラーズが代わりに編集してくれた。
元々合同で動画を作る予定があった事とちょうど当日がオフだったからできた荒業である。
近くにいたスタッフも「そうですよね」「お礼メールだけだと良くないですよ」という事で何か贈り物をした方が良いという結論に至った。
チームの総意としてお礼の品予算をひねり出すのでスティーラーズと一番親しい俺にチョイスを丸投げされた。
「とは言ってもなあ……」
貧乏チームなので予算はチームからの五千円に自分の小遣いを足して七千円ぐらい。まああまり高価な品だと気を遣うのでこれぐらいでいいと思う。
岩手から兵庫まで荷物を送ろうと思うと小さい箱でも千円を超えてしまうからあんまり大きいものや冷蔵品は送れない。
そしてもう一つ。俺は毎年バレンタインにスティーラーズから結構いいチョコを貰っている。
本人の『お前が美味しく食うてくれたらええねん』と言う言葉と、時期的な忙しさも相まってお礼のメールぐらいしかできていない。
「なんかいいもん送ってやりたいよな」
とりあえず地元の銘品などを見て回ると定番の品は大体一度贈ったことがあったり、予算的にきつそうだったりでかみ合わない。
そんな時、ふと目についたのが野田の塩クッキーだった。
三陸の海水を炊いて作られる塩を練りこんだクッキーはほんのりした塩気が甘さを引き立てて結構うまい。それにスティーラーズも神戸の製鉄所さんも確か紅茶党だったからこういうみんなで食べられるような焼き菓子はお茶うけに良さそうだ。
(そういやホワイトデーの贈り物ってなんか意味があったような?)
あれでいて色々と気にするタイプのスティーラーズであるので変に深読みされてはたまらない。
確認してみるとクッキーは友達でいましょうという意味だというので、とりあえずクッキーはスティーラーズ本人ではなくスタッフさん向けという事にしておいた。
意味の良さそうなお菓子としては飴とかマカロンとかバームクーヘンがいいらしいが、予算とスティーラーズの好みに合いそうなものはなかなか見つからない。
「……自分で作るか?」
既製品を買うより好みを知り尽くした自分が作る方が早い。
そう結論付けると、自分でも作れそうなものをさっそく調べることにした。

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ホワイトデー当日の昼下がり、電話を寄こしてきたのはスティーラーズだった。
『シーウェイブスお前マドレーヌなんて作れたん?!』
あの日作ったマドレーヌは無事スティーラーズの胃袋まで届いたようだ。
しっかり目の衛生管理とジビエ用の真空パック器のお陰で駄目になることなく無事に届いたようである。
「素人作で悪いが、ちゃんと信頼できるレシピ探して味見もしたから食える味にはなってたろ」
『惚れた相手の手作り言う時点で焦げても食えるけどな、味も初めて作ったんなら上等な部類やったし』
しれっと厳しめの評価が下ったが、それでもこうして喜んでくれたなら十二分に頑張った価値はあるというものだ。
(ここまで喜んでもらえるなら来年も試してみようか?)
まあ自分に余裕があれば、の話だが。


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シーウェイブスとスティーラーズの遅刻ホワイトデー。

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南の海から都会の真ん中へ

『お疲れ様、今日はしっかり休んでね。お土産は何が良い?』
ヒートくんがただそれだけの短いメッセージを送ってくれていることに気づいたのは、試合後のご飯に向かう車の中だった。
送信時間から察するに試合が終わってすぐに送ってくれたのは明白で、あれを見ていたんだとすぐに分かった。
「どうした?例のカレシ?」
「うん」
「そーいやアタシ会った事ないかも、どんな人なん?」
「すごく優しい人ですよ」
あともう少し頑張れば勝てたかもしれない試合だった、できる事は全部したつもりだし限界まで頑張ったつもりだった。
それでも勝てなかったのは私が足りなかったのか、単純に横にいる彼女が強かったのか。
それはしばらく考えないと私は答えが出せない問いなのだと分かった上で触れないでくれるヒートくんは優しいと言って良いだろう。
「パールズってシアワセもんだね。いいカレシがいて、強い仲間がいて、最高の試合させてくれて、こうしてメシにも付き合う事を許してくれて」
フェニックスさんがニッと思いきり笑う。
彼女にも素晴らしい選手や支援者に支えられたいいチームだった。
「それはフェニックスさんもですよ」
来年は日本一を獲った私になって、おうちで大好きな人におめでとうと言って貰えるようになりたい。
心からそう誓った。


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パールズとフェニックス。
女子ラグビーの生観戦は初でしたがめちゃくちゃ好ゲームでしたね……。

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美味しい黒魔女とクリームシチュー

土曜日の夜、先輩の家に泊まりに来た。
「良く考え付いたものだな」
「公式戦の次の日に練習試合が来たのは偶然ですよ?まあそれに便乗したのは僕ですけど」
久しぶりにとまりに来たブラックラムズ先輩の家はいつも通りモノクロでおしゃれな部屋だ。
だけど机の上には赤いバラが一輪。それがモノクロの部屋によく映える。
(ほんとにこういうセンスすごいよなあ)
人間で言えば高齢者に差し掛かる年でありながらセンスが若々しいのは本当にすごいと思うのだ。
「小腹空かないか?」
「あー、ちょっと空いてます。アフターマッチファンクションってつい話すことに夢中になっちゃうからあんまり食べられないんですよねえ」
「だと思った。クリームシチューを作ってあるが、食うか?」
「もちろん」
手伝えという風に視線で僕をダイニングへと呼んでくる。
僕は先輩の横に立つとすっとフランスパンを差し出してくる。
「適当に切ってトーストしておいて欲しい。ちなみに、冷蔵庫にカルピスバターとガーリックバターがある」
「……ガーリックバタートーストにホワイシチューですね?」
その組み合わせは絶対にうまい。
栄養バランスは置いといて今日だけはがっつり行かせてもらおう。
パンをザクザクと切ってから冷蔵庫にある二種類のバターを塗りたくる。
「もうこの時点で美味しそう」
「焼いた方が美味いぞ?」
鍋をかき混ぜるブラックラムズ先輩はなんとなく魔女っぽい、たぶんモノクロな見た目と羊の角のせいだろう。
「美味しい魔女の助言は聞いておきます」
トースターに入れてパンを焼くと、鍋からシチューの匂いが立ってきた。
野菜たっぷりのクリームシチューは彩り鮮やかだ。
「結構色々入れるんですね」
「野菜が結構残ってたんでな。玉ねぎ・人参・じゃがいも・かぼちゃ・ブロッコリー・ロマネスコ・赤と黄色のパプリカ・グリーンピース・しめじとまいたけ・鶏肉だが……食えないものはないよな?」
「ないですね、というかロマネスコって僕食べたことないんですけど」
「ブロッコリーと大体同じだからブロッコリーが大丈夫なら食える」
これだけ野菜が入ってるならビタミンはある程度補給できそうだなと妙な安心をしたところでトーストが焼けてきたようでいい匂いがする。
「もう良いな。イーグルス、食べられる分好きに盛るといい」
お玉を差し出されると先輩はトーストのほうを見に行ってしまった。
(……ちょっと味見させてもらお)
小さなスプーンで味見してみるとミルクと野菜の甘さの広がる優しい家庭の味が広がる。
純粋な料理の腕前で言うならサンゴリアス君のほうが上なんだけど、先輩のは料理上手なお母さんの味って感じがする。
でも先輩はお母さんじゃないので、つまり。
「美味しい黒魔女さん……」
「我が黒魔女なら汝は可愛い使い魔だな」
僕の感想を聞いて先輩は楽しそうに笑っていた。



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イーグルスとブラックラムズ。
公式戦で試合した次の日に練習試合組むのめちゃくちゃ仲いいな!という叫びを込めて

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愛しい人に贈るなら

4月になると思い出す人がいる。
自分と同じく死の淵を知る北国の素朴な花のような男である。
「姐さんは恋人にプレゼント送るならどんなん選びます?」
「急な質問ね……私なら身に着けるものを選ぶわね、服とか化粧品とかね」
「化粧品かあ」
シーウェイブスは化粧品をほとんどつけず、手荒れや唇の荒れの時にちょっとクリームをつけるぐらいしかしない。
それならハンドクリームなんかいいだろうか?
水産加工場や農場の手伝いで手荒れするようだし香りの薄いものなら気にせず使ってくれそうだ。
「ちょっと別んとこ見てきてええですか」
「いいわよ、私本屋見てるから終わったら連絡してね」
そう言って化粧品売り場のほうへ回る。
この時期は桜や藤の香りがついたものが多く、いまいちしっくりこない。
姐さんなら似合うけどなあ、と苦笑いしつつ目についたのは見切り品のコーナーだった。
「……梅のハンドクリームか」
冷たい海風に向かいながらラグビーボールを追う男に、梅の花のイメージはしっくり来た。
見切り品とはいえ使用期限は切れていないしシールをはがせばいいだけのことだ。
「せっかくやし、もうちょい色々選んだろうかな」
愛する男を磨く道具選びの喜びが胸の奥に灯る。
長くなりそうやったら姐さんには先戻っといてもらおうか、なんて考えながらケア製品のコーナーへと足を運ぶのだった。



おまけ:貰った側の話
神戸から22回目の誕生日祝いが届いた。
今年はスキンケア製品で統一されており、梅の香りのハンドクリームや高級なボディクリームなどが詰め合わせられていた。
昼間の仕事で荒れた手肌への気遣いなのだろう。
「だとしてもこんなに使いきれないんだが」
『毎日ちょっとづつつけられるように買うたんやけどな』
電話越しにスティーラーズがそう告げる。
『もったいない言うんなら来年以降毎年ハンドクリーム贈ったるわ』
「……わかった、ちゃんと塗るよ」
そう呟いてハンドクリームのふたを開ければかすかに梅の花の匂い。
嫌味にならない程度の程よい香りは春の前触れに似ている。
『梅が咲いたら俺を思い出すぐらい、毎年贈ったる』
スティーラーズのさらりとしたその一言にほんの少しの甘酸っぱい独占欲が滲んでいた。

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シーウェイブスとスティーラーズ。
今年も誕生日おめでとうございます。

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チョコレート忘れた

※サンゴリアスとワイルドナイツが付き合ってる世界線

カレンダーを見て「あ」とつぶやいた時にはもう遅かった。
「……バレンタインチョコのこと忘れてた」
毎年付き合いのあるメンツにウィスキーボンボンとかお酒に合うチョコを作って送っていたのに、今年はそれをきれいさっぱり忘れていた。
ブレイブルーパス先輩なんかは気にしないだろうけど、なあ……。
脳内で青いしっぽ毛を垂らした熊谷の男がふてくされてるのを想像して厄介な気分になる。
何より今日は平日で仕事があり、チョコなんて作る余裕もない。
いやまあ根本的にバレンタインのこと忘れててくれるとありがたいのだが、無理だろうなという気もする。
あいつにとってはずっと好きだった奴と過ごす初めてのバレンタインなのだ。
男でもこいつならいいかなあというふんわりした気持ちで付き合うことを承諾した俺とは違うのである。
グダグダ考えながらスーツに着替え、朝ごはんのおにぎりをレンジで解凍していたそのとき。
『きょうの昼あたり日比谷のほう来れたりする?』
ワイルドナイツ本人からのショートメッセージだった。
外回りの予定を確認してから『仕事終わりならいけると思う』と返す。
『わかった、夕飯一緒に食おう』
それまでにチョコ買うしかないかなあ、とぼんやり考えた。

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午後7時、混雑した電車を降りて待ち合わせの改札を目指す。
何故かこういう日に限って仕事が立て込んでしまうのはなぜだろうと心底思う。チョコどころか昼飯もろくろく食う余裕がなかった。
改札を抜けて目的の人物を目で探そうとすると「おつかれ」と声がかかった。
「ワイルドナイツ」
「東京ってどこの駅も混んでるよね、うちわ祭りの熊谷駅前よりひどい」
「ならなんでお前は一発で俺が分かるんだよ」
「好きだから」
付き合いだしてからワイルドナイツには恥じらいが消えた、素面でこういうこと言えるのはある意味すごいと思う。
「飯屋どこに行くんだ?」
「ドイツ料理、一番上からビールが美味しいって聞いたから」
「お前相変わらずお兄さんたちに辛辣だな」
「バレンタインの特別ディナー予約してあるからサンゴリアスがあんまり遅くならなくてよかった」
表情はいつも通りなのにどこか声が弾んでいて浮かれてるのがもう声色でわかる。
その様子を見てるとバレンタインを忘れてた罪悪感が心の突き刺さってきて、これもう俺がケツ差し出す覚悟したほうがいいかもなあ……などと思ってしまうのだった。


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バレンタインのサンゴリアスとワイルドナイツ。
いつも付き合ってないクソデカ情愛ばっかり書いてるのでたまにはラブ寄りのやつを。
そしてバレンタイン遅れてしまってすいませんでした。

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