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コーギーとお昼寝

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愛しい人に贈るなら

4月になると思い出す人がいる。
自分と同じく死の淵を知る北国の素朴な花のような男である。
「姐さんは恋人にプレゼント送るならどんなん選びます?」
「急な質問ね……私なら身に着けるものを選ぶわね、服とか化粧品とかね」
「化粧品かあ」
シーウェイブスは化粧品をほとんどつけず、手荒れや唇の荒れの時にちょっとクリームをつけるぐらいしかしない。
それならハンドクリームなんかいいだろうか?
水産加工場や農場の手伝いで手荒れするようだし香りの薄いものなら気にせず使ってくれそうだ。
「ちょっと別んとこ見てきてええですか」
「いいわよ、私本屋見てるから終わったら連絡してね」
そう言って化粧品売り場のほうへ回る。
この時期は桜や藤の香りがついたものが多く、いまいちしっくりこない。
姐さんなら似合うけどなあ、と苦笑いしつつ目についたのは見切り品のコーナーだった。
「……梅のハンドクリームか」
冷たい海風に向かいながらラグビーボールを追う男に、梅の花のイメージはしっくり来た。
見切り品とはいえ使用期限は切れていないしシールをはがせばいいだけのことだ。
「せっかくやし、もうちょい色々選んだろうかな」
愛する男を磨く道具選びの喜びが胸の奥に灯る。
長くなりそうやったら姐さんには先戻っといてもらおうか、なんて考えながらケア製品のコーナーへと足を運ぶのだった。



おまけ:貰った側の話
神戸から22回目の誕生日祝いが届いた。
今年はスキンケア製品で統一されており、梅の香りのハンドクリームや高級なボディクリームなどが詰め合わせられていた。
昼間の仕事で荒れた手肌への気遣いなのだろう。
「だとしてもこんなに使いきれないんだが」
『毎日ちょっとづつつけられるように買うたんやけどな』
電話越しにスティーラーズがそう告げる。
『もったいない言うんなら来年以降毎年ハンドクリーム贈ったるわ』
「……わかった、ちゃんと塗るよ」
そう呟いてハンドクリームのふたを開ければかすかに梅の花の匂い。
嫌味にならない程度の程よい香りは春の前触れに似ている。
『梅が咲いたら俺を思い出すぐらい、毎年贈ったる』
スティーラーズのさらりとしたその一言にほんの少しの甘酸っぱい独占欲が滲んでいた。

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シーウェイブスとスティーラーズ。
今年も誕生日おめでとうございます。

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